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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
竜殺しの章
50/211

 

 自分達に、破滅をもたらす炎の竜が向かって来ていることなど、露ほども考えていないホグニ伯爵は、中庭に出て私兵たちを鼓舞していた。


「さあ!酒も報酬も、たっぷりと用意した!諸君!今宵は存分に働いてもらうぞ!!」

「「オオーーーーーーーーー!!」」


 ホグニ伯爵の私兵たちは、そのほとんどが、貴族の三男や四男である。

 家を継ぐ可能性の薄い彼等は、貴族派の筆頭であるホグニ伯爵の恩恵に与ろうと、集まってきた者たちなのだ。

 プライドが高く、平民達に対するその悪逆な仕打ちから、悪騎兵団などと呼ばれ、ミズガルズでも扱いに困っている集団であった。

 しかし、そんな彼らの頭上に、着実に破滅は近づいていた。


 炎竜ヴァルカンは、自らの獲物に向かい、恐ろしい勢いで飛翔していた。


『愚カナル人間ドモメ!裁キノ炎ヲ喰ラウガイイ!!』


 そう言うと、ヴァルカンは自らの中にある膨大な魔力を、練り上げ始めた。

 竜とは、魔法生物である。

 この世界において、全ての生物の頂点に立つこの生物は、竜核という心臓ともいえる器官を持っており、その属性によって、その生態も変化する存在であった。

 竜核より放出された、炎の属性の魔力が、肺を通じて一気に気道に流れ込み、その顎門より吐き出された。

 巨大な炎弾は流星となって空を翔けた。


 最初に気が付いたのは、歩哨に立っていた兵士である。

 皆が英気を養う酒宴から外され、不貞腐れていた彼は、空を何気なくみていたのだが、その一点に、月にしては小さく、星にしては大きい赤い光を発見した。


「なんだ?ありゃ?」


 そう思った次の瞬間、赤い光は、どんどん巨大になっていった。

 他の者が、気付いたのはこの時である。

 それは、まるで夜明けが突然やって来たような煌きであった。

 ホグニ伯爵もまた、その輝きに気付き、目を細めた。


 カッ!!!


 チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!


 ホグニ伯爵の別荘に着弾したヴァルカンの炎弾は、一瞬にして全てを薙ぎ払った。

 爆炎は、地上に存在していた兵士達を、消滅させ、大地を(えぐ)った。

 そして、巻き上がった爆煙は、巨大なキノコ雲となった。

 その振動は、大地を伝い、ウルザブルンにも届いた。


「いったいなんだ!こんな夜中に!!」


 ウルザブルンの住人達は、その音と振動によって、就寝より叩き起こされた。

 ジークフリート一行も、宛がわれていた宿屋から飛び出し、その光景を目にした。


「おそらく、火竜のブレスだな!こんな威力のブレスを吐くことができるのは、エンシェントドラゴンしかいない!」

「あそこには確か、貴族の別荘があった筈だ。・・・やられたのは、おそらく、ホグニ伯爵かその手下だろうな。しかし、あんなことのできるヤツと戦うのか、骨が折れそうだな。」

「いや!むしろ明日の明け方に、時の塔に乗り込むのが、もっとも効果的だろうな!」

「どういうことだ?」


 などという、会話を交わすジークフリート達を他所に、炎竜ヴァルカンは、意気揚々と凱旋していた。


『ウワッハッハッハ!我ト我ガ花嫁ノ巣ニ狼藉ヲ働コウトスル者ハ、皆コウナルノダ!思イ知ッタカ、愚昧ナル人間ドモメ!!』


 その笑い声は、空に響き渡った。

 ホグニ伯爵、終了の巻!!ヴァルカン圧倒的でした。

 この強敵を前に、ジークフリート一行はいかな、戦術をもって挑むのでしょう?

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