隊商頭ディートリヒ
「凄えな!!姉さん達!!」
「あんたらのお陰で、助かったぜ!ありがとうよ!!」
突如として現れた二人の戦乙女達によって救われた隊商の者たちは、彼女達を讃えた。
その騒ぎを他所に、隊商の頭であるディートリヒは、そのうちの一人、ブリュンヒルデに目を奪われていた。
(まさか・・・女神の封石の女神さまか?いや、まさか・・・。)
そんな彼に、護衛隊長のハイメが声をかけてきた。
「確かにとんでもない姉さん達だが、随分熱心に見つめるじゃないか。アリシアが焼き餅焼くんじゃねーの!」
「そういうんじゃない・・・ただ気になってな。」
「ふうん。」
そこへ、ジークフリートを連れ、ディートリヒの妻であるアリシアがやってきた。
「あなた!あちらのお二人の御主人をお連れしたわ。」
「アリシア!無事でよかった!」
ディートリヒは、アリシアに駆け寄ると、しっかりと抱きしめた。
そして、ジークフリートに向きなおると、助成に対する礼を述べた。
「礼を言う。本当に助かった。」
「困った時は、お互い様だろ?それに、俺はほとんど何もしてないよ。」
「それでも、言わせてほしい。ありがとう!!」
ジークフリートは、ディートリヒの実直な性格に、好感を覚えた。
すでに、隊商のものたちは、盗賊の死体の処理を開始していた。
ディートリヒは、この盗賊の持っていた装備の取り分をジークフリートに相談しようとしたが、ジークフリートは、この申し出を辞退した。
「しかし、それでは、こちらの気が済みません。お礼だけでも受け取ってもらえませんか?」
そう提案したディートリヒに、答えたのは、隊員達に囲まれていたブリュンヒルデであった。
「では我々も、同道させてもらうというのはどうかな?主殿。」
「どういうことだ?」
「この者達の行き先も、ウルザブルンということだ。共に行けば、危険も少ないであろう?」
ジークフリートは、その言葉に頷いた。
ディートリヒ夫妻は、ここぞとばかりに提案してきた。
「ならば、御一緒させていただく間、我々が皆さんの糧食を準備させていただきます。」
「私も腕を振るいます。是非!」
ジークフリートは、苦笑しながら、その提案を受け入れた。
ディートリヒは、自分達の馬車に戻るジークフリートたちを見送ると、自分達も、隊列を組み直すため、隊員たちに、指示を出しに戻った。
しかし、その頭の中には、ある一つの確信が、芽生えていたのである。
(間違いない!ジークフリート殿の腰の剣、あれは、ヴァルムンクの宝剣、グラムだ!)
なぜ、ディートリヒは、いろいろ知っているのでしょうか?
答えは、次回です。