水源
エーリヴァーガル
アズガルドに存在する河川の総称である。
十の大河に分かれた河川は、アズガルド全土に恵みをもたらす生命の源でもある。
その水源であるフヴェルゲルミルは、巨大な湖で、その中心には、島が存在し、塔が建っているのだが、何者も入ることもできなければ、触れることも出来ないのである。
そのため、幻の塔と言う通称が生まれたのだ。
今では、観光の名所になっているだけであったのだが、
「まさか、その幻の塔が、次の目的地とはな。」
「時の塔だぞ主殿!」
「私たちとは別の使命を持つ、ノルンの守る塔ですね。当然、関わり無き者が、塔に立ち入ることなど出来ません。」
「ノルンと言うと、過去、現在、未来を司る女神のことだな。」
「名が、それらの意味を持つというだけの話だ!神といえども、時間に干渉することは出来ない。精々、未来を覗く程度だ!」
「覗けるだけでも、凄すぎるが・・・。」
「オラクルなどの力を持ってしても、断片的に見えるだけですからね。それだけ、当代の教皇エイルの理解力が優れているのでしょうね。」
などという、会話を交わしながら、一行は、フヴェルゲルミルにある湖畔の町、ウルザブルンを目指していた。
浮遊馬車での旅は、快適だった。
これまでの旅は、野宿が普通であったのである。
ブリュンヒルデは魔法で、空中に浮いたまま寝ていたりしたのだが、ジークフリートは常に、大地に直に横たわっていた。
この馬車は、座席が倒すことが出来るので、寝台としても使えるのだ。
ジークフリートは、この馬車を与えてくれたエイル教皇に、改めて感謝した。
街道を進む一行は、順調な旅を続けていたが、いつの時代も、力で全てを得ようとする無法者は、後を絶たないものである。
「主殿!アレを!」
ブリュンヒルデの指し示した方向に、盗賊の集団に襲われる隊商がいた。
「助けるぞ!二人とも!」
そう言って、ジークフリートは、馬に鞭を入れた。
「主様、ここは私たちに、お任せください。」
疾走する馬車の中で、シュベルトライテが提案してきた。
ジークフリートは、ブリュンヒルデに視線で尋ねた。
ブリュンヒルデは、力強く頷くと答えた。
「力無き者を守るのも、我らの務めだ!主殿!」
「よし!行け!」
「「承知!!!」」
二人の戦乙女は、馬車から飛び出ると風のように駆け、盗賊の群れに突っ込んだ。
ようやく、次なる目的地に一行は向かいます。
そして、そこでの新たな出会いとは・・・。