霧の森
(なんとも変な爺さまだったぜ・・・)
閃光が納まると、老人は、忽然と姿を消していた。
ヤケ酒を飲み過ぎたせいで幻でも見たかと思ったが、テーブルの上に置かれたままの宝珠が、それは夢ではないことを告げていた。
シグルドは未だ忘れられぬ女性への想いを断ち切る為、あの老人の言うことに乗ってみることにした。
導きの宝珠の指し示すという、自分の運命という言葉に興味があったのは間違いなかったが、差し当たり目的もないシグルドは、ただひたすらに、宝珠の光の指し示した方角へ、黙々と歩き続けたのであった。
しかし、どれだけ歩いても、何の変化も起きなかった。宝珠は一つの方向を示したままであり、国境を越え、道なき道を進み続けたが、一体どこへ自分を導こうとしているのか、シグルドには見当もつかなかった。
痺れを切らしたシグルドは、道を変えてみることにしたが、これが災難を呼ぶこととなった。
一度目は、盗賊の集団に襲撃された。
二度目は、オオカミの群れに襲われた。
三度目が、コレである。
地面に倒れ伏す、トロールの死体の山に、シグルドは溜息をついた。
どうやら、近くにトロールの巣があったらしい。一体目を倒した後、まるで湧き出るように、二体目、三体目と続き、十体を越える群れとなったのであった。
(俺の、運気が下がるアイテムか何かか?)
そう考えたが、それでもいいと思っていた。
なにせ、全て、魔導装甲を出すまでもなく片付いてしまったのだ。
怒りのぶつけどころがこれでは、肩すかしもいいところであった。
不貞腐れながら歩いてると、辺りの様子が段々と変ってきたことにシグルドは気付いた。
足を止め、魔導鞄から地図を出し、現在の自分の居場所の見当をつけようとした。なにせ森に入ってからは、獣道があった程度で、目印になるものなどなかったのだ。
しかし、目の前に、漂い出した濃い霧に、シグルドはある記憶に思い至った。
「ヴァルムンクの霧の森か・・・。」
わけ入れば、生きて帰ってきた者はいない、などと語られている森である。
まあ、語られている以上、生存者がいるのだろうが、あの噂が事実であるとしたら、なるほど、たしかにこれは一筋縄ではいかない冒険となるだろう。
「面白くなってきやがった!」
シグルドは、勇躍すると、宝珠の指し示す方角へ、再び歩き出した。
森の奥に、進めば進むほど、霧は濃くなってゆく。
一体どれほど進んだのであろうか、いつの間にか、シグルドは、自分が石畳の上を歩いていることに気が付いた。
そして、ついにそれは姿を現した。
かつて、その一帯を支配していた、ヴァルムンクの都市、その城門である。
戦闘シーン書くのって難しいですね!