第二の契約
「まさか、剣舞陣が、あのような方法で破られるとは・・・。」
シュベルトライテは、やや放心しながらも、その事実を受け入れた。
「私の負けですね・・・今日より貴方を主と認めましょう。」
第二の女神が、仲間となった瞬間だった。
そこへ、声をかけた者がいた。
「どうやら、お互い傷つくこと無く、決着がついたようだな。」
その声に、練兵場にいた者たち全員が視線を向けた。
そこには、ブリュンヒルデとエイル教皇が、並んで立っていた。
「どうだ?強かったろう、我が主殿は。」
「姉上・・・。」
「ところで、肝心の契約がまだだろう?さっさと済ましてしまえ。」
そう言われた瞬間、シュベルトライテは、顔を真っ赤にした。
契約と言われて、ジークフリートにも思い浮かぶものがあった。
(まさか・・・あれか?またこんな大勢の前で!)
などと思っていると、意を決したのか、シュベルトライテがジークフリートの前へやってきた。
ジークフリートは、慌てた。
「ちょっと待て!今回の勝負は、フェアとは言えない!俺は、ブリュンヒルデに、君の戦い方を教わっていたんだ!」
「しかし、私に勝ったのは紛れもない事実です。それとも・・・嫌ですか?私のような女は・・・。」
「そんなことはない!むしろ君のような女性に・・・。」
ジークフリートは、最後まで発言することは出来なかった。
言葉の途中で、シュベルトライテが、唇を合わせて来たからだ。
それは、触れるだけのキスであった。
キスを終えると、シュベルトライテは、顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
騎士団の乙女たちは、大騒ぎである。
中には、悲鳴まで上げる者もいる始末である。
「なんと愛い奴じゃ!シュベルトライテ!!」
我慢しきれぬ者もいた。
もちろん、ブリュンヒルデである。
彼女は、シュベルトライテに抱きつくと、力いっぱい振り回していた。
ジークフリートが、呆れてみていると、エイル教皇が祝いの言葉をかけてきた。
「おめでとう御座います。ジークフリート様、今日は教会にお泊まり下さい。ささやかではございますが、祝宴を儲けさせていただきます。」
ジークフリートは、恐縮したが、エイル教皇はこう続けた。
「貴方様の、行く先には、様々な困難が待ち受けております。どうか、この街に滞在の間は、英気を養っていただきたいのです。」
ジークフリートは、エイル教皇の言葉に、甘えることにした。
それに、この街で一つやらねばならぬことがあったからだ。
ジークフリートは、早くも祝宴の準備のため、部下に命令しているエルルーンに近づいた。
「エルルーン殿、お忙しいところ悪いのだが、頼みがある。」
「これは、ジークフリート様。私でよければ、なんなりと。」
ジークフリートは、女神たちを示しながらこう言った。
「あの二人に合う普段着を見繕ってくれないか?」
エルルーンの目が点になった。
契約完了です。そういえば、ろくな普段着がなかったんだよね。二人とも。




