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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
試練の旅の章
38/211

第二の契約

「まさか、剣舞陣(ミラージュソード)が、あのような方法で破られるとは・・・。」


 シュベルトライテは、やや放心しながらも、その事実を受け入れた。


「私の負けですね・・・今日より貴方を主と認めましょう。」


 第二の女神が、仲間となった瞬間だった。

 そこへ、声をかけた者がいた。


「どうやら、お互い傷つくこと無く、決着がついたようだな。」


 その声に、練兵場にいた者たち全員が視線を向けた。

 そこには、ブリュンヒルデとエイル教皇が、並んで立っていた。


「どうだ?強かったろう、我が主殿は。」

「姉上・・・。」

「ところで、肝心の契約がまだだろう?さっさと済ましてしまえ。」


 そう言われた瞬間、シュベルトライテは、顔を真っ赤にした。

 契約と言われて、ジークフリートにも思い浮かぶものがあった。


(まさか・・・あれか?またこんな大勢の前で!)


 などと思っていると、意を決したのか、シュベルトライテがジークフリートの前へやってきた。

 ジークフリートは、慌てた。


「ちょっと待て!今回の勝負は、フェアとは言えない!俺は、ブリュンヒルデに、君の戦い方を教わっていたんだ!」

「しかし、私に勝ったのは紛れもない事実です。それとも・・・嫌ですか?私のような女は・・・。」

「そんなことはない!むしろ君のような女性に・・・。」


 ジークフリートは、最後まで発言することは出来なかった。

 言葉の途中で、シュベルトライテが、唇を合わせて来たからだ。

 それは、触れるだけのキスであった。

 キスを終えると、シュベルトライテは、顔を真っ赤にして、俯いてしまった。

 騎士団の乙女たちは、大騒ぎである。

 中には、悲鳴まで上げる者もいる始末である。


「なんと愛い奴じゃ!シュベルトライテ!!」


 我慢しきれぬ者もいた。

 もちろん、ブリュンヒルデである。

 彼女は、シュベルトライテに抱きつくと、力いっぱい振り回していた。

 ジークフリートが、呆れてみていると、エイル教皇が祝いの言葉をかけてきた。


「おめでとう御座います。ジークフリート様、今日は教会にお泊まり下さい。ささやかではございますが、祝宴を儲けさせていただきます。」


 ジークフリートは、恐縮したが、エイル教皇はこう続けた。


「貴方様の、行く先には、様々な困難が待ち受けております。どうか、この街に滞在の間は、英気を養っていただきたいのです。」 


 ジークフリートは、エイル教皇の言葉に、甘えることにした。

 それに、この街で一つやらねばならぬことがあったからだ。

 ジークフリートは、早くも祝宴の準備のため、部下に命令しているエルルーンに近づいた。


「エルルーン殿、お忙しいところ悪いのだが、頼みがある。」

「これは、ジークフリート様。私でよければ、なんなりと。」

 

 ジークフリートは、女神たちを示しながらこう言った。


「あの二人に合う普段着を見繕ってくれないか?」


 エルルーンの目が点になった。



 契約完了です。そういえば、ろくな普段着がなかったんだよね。二人とも。


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