魔神化
ジークフリートは、両手で剣を掲げると、魔導装甲を起動した。
宝玉が輝くと、獅子の声が轟き、ジークフリートは全身を黒獅子の鎧に覆われていた。
ここまでは、いつもと同じである。
ジークフリートは、目を閉じ呼吸を整え、ブリュンヒルデとの特訓を思い出した。
あの時、彼女は、命がけと言った。
しかし、命を賭けなければならなかったのは、ブリュンヒルデであった。
剣を何度も打ち合った後、彼女は、剣と盾を放り出し、両手を広げ、丸腰でジークフリートの前に立ちはだかったのだ。
闘争本能に支配されつつ、精神だけの世界で、その暴風に晒されていたジークフリートは絶叫した。
「この!バッキャロオオオオオオ!!!」
剣は、まさに彼女の頭を叩き斬る寸前で止まった。
後で聞いた話だが、ブリュンヒルデは、本気で死を覚悟していたらしい。
(ようは、気合いだろ!!それにしても、ヒルデのヤツ無茶しすぎだろうが!)
ジークフリートは、ブリュンヒルデに、惹かれ始めている自分に気が付いていた。
彼女に、自分が、異世界から来た人間であるのを明かしたのも、その気持ちの現れである。
(あいつに相応しい男になってみせる。そのために!!)
ジークフリートの魔導装甲の刻印が、輝きだした。
その色は、金色、そして、頭髪は白く染まり、見開いた目の瞳は、深紅に染まっていた。
「「オオッ!?」」
騎士団の驚き見満ちた声が響いた。
魔神の血を制御することは、困難を極めたが、特訓を経て、ジークフリートは、十全にその力を使いこなせるようになっていたのである。
「なるほど、姉上に認められたのは、伊達ではないということですか。」
シュベルトライテも、神鎧甲の力を解放した。
こちらは、蒼い光が刻印となって、輝いた。
「両者共に、準備はよろしいですね?」
審判となったエルルーンが尋ねると、二人は同時に頷いた。
両者の意志を確認したエルルーンは、右手を挙げた。
「それではここに、ジークフリート様と、シュベルトライテ様の試合を始めます。両者ともに、正々堂々と戦って下さい。では!試合開始!!」
エルルーンの右手が下ろされると同時に、二人は戦いを始めた。
次回は、シュベルトライテとの、試合です。