第二の試練
ジークフリート達が出ていくと、残されたのはエイル教皇とブリュンヒルデのみであった。
エルルーンが、護衛を何名か残そうとしたのだが、二人共に必要ないと言ったからである。
「さて、エイル、私がここに残った理由は、分かっているのかな?」
その質問に対し、エイル教皇は重々しく頷いた。
「大封印でございますね。」
「そうだ、父神オーディンが、命を賭して施した大封印、一度この目で見ておきたくてな。」
「ご案内いたしましょう。」
エイル教皇は、祭壇のすぐ横にある、地下へ通じる階段を示した。
階段は、地下深くにまで掘られていた。
「よし!では行くか!」
そう言うと、ブリュンヒルデは、エイル教皇をヒョイと担いだ。
いわゆるお姫様抱っこである。
「ブ、ブリュンヒルデ様?」
「時間が惜しい、このまま行くぞ。《光よ!我が行く道を照らせ!》」
ブリュンヒルデが、ルーン言語魔法を唱えると、光球が頭上に現れ、階段を照らした。
その階段を、ブリュンヒルデは風のように降って行った。
エイル教皇のヒアアアと言う悲鳴を残して。
そのころ、ジークフリートとシュベルトライテは、薔薇十字聖騎士団の騎士達と共に、練兵場に到着していた。
騎士達は、二人の戦いを見ようと、既に休憩用の長椅子を持ち出し、即席の観覧席を作っていた。
騎士達は、禁欲の毎日を過ごしているため、こういうイベントには、からっきし弱いのである。
であるので、観覧席は全て満席である。
時折、押さないでよとか、早く始まらないかな、などといった声も聞こえていた。
(お祭り騒ぎみたいになってるな。見世物ではないんだが・・・。)
などと思っていると、審判役であるエルルーン団長が声を掛けてきた。
「すみませんジークフリート様、シュベルトライテ様、皆娯楽に飢えていて、こういう機会はめったに無いものですから。しかも、戦うのは、我らが女神と、我らの英雄どのですから、押さえが効かぬのです。」
ジークフリートは、苦笑しながら答えた。
「構わんよ。勝負に影響がある訳ではないしな。」
その言葉に、シュベルトライテも答えた。
「私も構いません。衆人環視の中、貴方を、完膚なきまでに叩きのめして差し上げましょう。」
どうやら、ジークフリートの態度を、余裕と見たのか、シュベルトライテはキツい口調で、挑発してきた。
「そういえば、まだ自己紹介していなかったな。ヴァルムンクの後継者、ジークフリートだ。」
シュベルトライテは、渋々といった感じで答えた。
「オーディン神が次女、剣の女神シュベルトライテです。貴方のその余裕、いつまでもつでしょうか?」
そして、二人は構えあった。