刀
教皇本人が、出迎えるなど、まるで国賓の待遇である。
「まさか、エイル猊下本人が御出で下さるとは。」
ジークフリートも、これには驚いた。
初めて、顔を見た教皇エイルは、人の良さそうな老婆であるが、そうではないことをジークフリートは知っていた。
「他の世界から、おいで下さった貴方様には、珍しい事かもしれませんね。」
薔薇十字聖騎士団の団員達は、不思議そうな顔をしていたが、ブリュンヒルデがそれに答えた。
「さすが、オラクルだな!私もそのことを主殿から教えてもらったのは、つい最近だと言うのに。」
エイル教皇は、ニコリと微笑むと、二人を神殿に誘った。
「さあ、どうぞこちらへ。」
「うむ!よろしくたのむぞ!」
ブリュンヒルデは、平常運転である。
いつもなら、人が溢れている大聖堂の中に、人はいなかった。
「人払いをしておきました。女神の封石はこちらです。」
大地母神フレイアの巨大な神像の足元に、封石はあった。
ジークフリートは、封石の前に立ち、女神を見つめた。
羽飾りの付いた兜を被り、ブレストプレートを着けた武装は、ブリュンヒルデと同じであるが、色が違った。
全体的に、藍色一色で統一されていた。
髪は、漆を塗り込めたような漆黒、長さは腰まであった。
そして何よりも、目を引いたのは、両の手に持っていた片刃の曲刀である。
「まさか、コレは刀か?」
「主殿の世界の武器だったな、確か。」
「ああ・・・柄のこしらえはこの世界のものだが、刀身はまさに刀だな。」
「この武器の名は、シルドレイク、《龍を切り裂くもの》と言う。」
「ヒルデのゼファリス《正義》もそうだが、凄い名だな。」
ジークフリートは、グラムに手を掛けると、スラリと抜いた。
教皇エイルや、薔薇十字聖騎士団の面々の前で、ジークフリートは剣をかざした。
「ではいくぞ!!」
ジークフリートは、宝剣に念じた。
(封印よ、退け!!)
その瞬間、グラムが輝き、封石に亀裂が入った。
亀裂から光が漏れだし、光が大聖堂を満たしてゆく、そして、ドカッと封石の砕ける音が聞こえた。
光が納まると、かつてブリュンヒルデの宝石がそうであったように、封石の破片が、宙に浮いて留まっていた。
その中心から、一人の女神が歩み出た。
「私を封印から解いたのは、貴方か?」
鈴の鳴っているような、凛とした声が、大聖堂に響いた。
第二の女神、シュベルトライテがついに目覚めたのである。
シュベルトライテさん、復活!大和撫子風女神です!!