フォールクヴァング
三人は、市街地の中心を東西に走る中央通りを歩いていた。
フォールクヴァングは円形都市で、セスルームニル大神殿は、その中心にあるのだ。
ジークフリートは、街の様子に、感心していた。
てっきり女の城だと思っていたこの都市は、錬金術師の商店や鍛冶屋などに男の姿が見えたからだ。
その姿を見て、エルルーンが声を掛けた。
「以外かな?シグ・・・ジークフリート様?」
「殿で結構だよ、エルルーン殿?」
「ブリュンヒルデ様のパートナーに、そんな軽口は、使えませんよ。」
ブリュンヒルデは、満足そうに、頷いている。
ジークフリートは、頬を掻きつつ、質問に答えた。
「正直な話、意外だった。こんなに男がいるとは、思わなかったな。」
「ここは、大地母神フレイア様を祀った神殿がありますので、当然、農民や職人たちもやってきます。ですので、男がいるのは、むしろ当然のことですね。」
「だが、それだと奴隷などから逃げてきた女を追いかけてきた男達が、街に入ってしまうんじゃないか?」
「我らがオラクルの目を掻い潜ってですか?」
「ああ・・・なるほどね。」
エルルーンは、頷いた。
「エイル様は、この街の要です。我らは、あの方の部下であることを誇りに思います。」
ジークフリートは、エルルーンのその言葉を聞き、羨ましいと思った。
ミズガルズは、かつて自分が信じた人々は、どうだったろうか。
「主殿、考えの途中で邪魔して悪い。どうやらお迎えのようだぞ。」
ブリュンヒルデの言葉に、ジークフリートは我に返った。
セスルームニル大神殿の前には、教皇エイルをはじめ薔薇十字聖騎士団の団員達が百人ほどで、隊列を成していた。
教皇エイルが、進み出て二人を迎えた。
「ようこそおいで下さいました。女神ブリュンヒルデ様、そして・・・。」
エイルの瞳が、ジークフリートをジッと見つめた。
「約束の者ジークフリート様。」
ついに、神殿到着、第二の女神との邂逅です。