オラクル
フォールクヴァングの中心、セスルームニル大神殿その最上階、そこは、女教皇エイルの私室である。
エイルは、60歳になろうかと言う高齢の女性で、この街の全ての住民から慕われていた。
治癒の力で、身分の隔てなく全ての民に癒しをもたらし、夢を使い未来を予見する預言者としての役割も担っていたからである。
その彼女が、ここしばらく、一つの夢を見続けていた。
それは、世界が、炎と闇に閉ざされる夢だ。
闇の中に、二つの巨大な眼が見えていた。
その眼は、じっと自分を見つめていた。
しかし、恐れは無かった。
なぜなら、この夢には、続きがあるからだ。
闇の中に、一つの光点が現れた。
そして、光点は更に九つに増え、次に、数えきれない程の光の渦に変わるのだ。
光が、世界を覆い尽くす、そこでいつも目が覚めるのだ。
彼女は、目覚め天蓋付きのベットから起き出し、バルコニーから、北の空を見つめた。
「北の凶星が、目覚めようとしている。しかし、希望はある。このフォールクヴァングも共に世界を守らねば・・・。」
風に、その白く染まった髪を揺らしながら、エイルは、その瞳に決意を漲らせた。
夜が明け、フォールクヴァングの人々が次第に起き出してきたころ、その正門に現れた二つの人影があった。
この街を守るのは、薔薇十字聖騎士団という女性だけで構成されている軍隊である。
正門を守る衛士たちは、その二人に身分明かすよう求めた。
「旅の剣士、ジークフリートだ。この街には所用があり立ち寄った。入場を許可していただきたい。」
「その妻(になる予定)のブリュンヒルデだ!よろしく頼む!」
衛士たちは、二人の名前を聞いて驚いたようであったが、少々お待ち下さいと言い、二人を、正門の横に建てられた、入関所の応接室に案内した。
お茶が出され、ソファーを勧められた二人は、大人しく従った。
二人が、不思議に思っていると、いかにも聖騎士いう装いの女性が、現れた。
その女性聖騎士は、二人の前のソファーに座り、頭を下げつつこう言った。
「ようこそ、フォールクヴァングへ!お待ちしておりました。ジークフリート様、ブリュンヒルデ様!」
ジークフリートとブリュンヒルデは、顔を見合わせた。
二人は無事、フォールクヴァングに着きました。