魔王たちの策謀
二人が、命がけの特訓をしているその時、ヨートゥンヘイムでは、四柱の魔王たちが、次なる大封印を破壊すべく、策を練っていた。
円卓が置かれた、大広間で四柱の魔王たちは座についていた。
「では、お前だけでフォールクヴァングに赴くと言うのだな、ヘル。」
「その通りです兄上、私と私の僕たちのみで、フォールクヴァングの大封印、破壊してご覧にいれましょう。」
その言葉に、獣王フェンリルが異を唱えた。
「あんな寺院なんて、潰しちまえばいいんじゃねえの?」
その言葉に、ヘルは髪を逆立てた。
フェンリルが、思わずたじろぐほどの気迫である。
黒龍太子ファーブニルが、軽く笑いながらその問いに答えた。
「フェンリルよ、ヘルはそれを避けるために自らが行くと言っているのだ。フォールクヴァングは、女のみで軍を編成している。我らが行けば、その女どもは、全て死に絶えるであろうからな。」
フェンリルが、納得したように頷いた。
『だが、それでは姉者の命が危うい・・・よいのか兄者。』
蛇王ヨルムンガルドが、ヘルの身を案じてファーブニルに尋ねた。
「覚悟の上だろう。それに、大封印は、ヘルの持つ破神の槍ミストルティンでしか破壊できぬ。任せてよいのだな、ヘルよ。」
その問いに、ヘルは決意に満ちた顔で、頷いた。
「姉者は、女子供には優しいからなぁ。でも姉者が失敗した時は、結局攻め落とすことになるんだぜ?」
「失敗などしない。お前こそ獣人・・・いや獣牙族達のことになると、眼の色を変えるだろう?」
「そりゃあそうだけどよ。姉者は、大封印の破壊には無くてはならない存在だろ?なにかあったら困るじゃないか。」
「おや?心配してくれるのか。可愛いところがあるじゃないか。」
その言葉に、フェンリルは、バツが悪そうに顔を逸らした。
「しかし、フェンリルの指摘も、もっともだ。失敗は許されんぞ。」
ファーブニルが、言外に、失敗すれば全軍を持って侵略するとの意味を込めた言葉に、ヘルは、立ち上がって答えた。
「私は、夜の女神ヘル!!誰にも気付かれることなく、事を成し遂げて見せましょうぞ!!!」
魔王たちが、動き出しました。どうなるのでしょうね?