九つの試練
二人は、フォールクヴァングに続く街道沿いを歩いていた。
ジークフリートは、魔導装甲を解除し、旅装に戻っていた。
黒を基調とした装いで、その上からマントを羽織っていた。
季節は、まだ、冬を迎えようという時期である。
ジークフリートは、チラリとブリュンヒルデを見て、早くも後悔した。
(ヒルデの言う、普段着という言葉を鵜呑みにした結果がこれか・・・。)
ジークフリートの横を歩くブリュンヒルデは、袖の無い絹でできた服を着ていた。
膝下の丈は短く、美しい太ももが丸見えである。
どう見ても、貴族や王族が式典などで着用するような服である。
しかも、聞くところによると、肩の部分に付いた装飾のルビーが発動体なのであろうが、付加された魔法によって、防温、防虫、除菌、そして紫外線なども防ぐ代物らしい。
足には、足首まである皮を編みこんだサンダルを履いていた。
これも、速度上昇などの魔法が掛かっていた。
(そう言えば、ヒルデは女神だったんだ、王族よりも高価な服を持ってていても、不思議じゃなかった・・・。)
剣は、鞘に差して腰のベルトに装着し、盾は、神鎧甲と共に剣の柄頭にある触媒の宝玉に収納されている。
どこから見ても、平民とは見えないだろう。
ジークフリートは、これから起こるであろう騒動に頭を痛めた。
そんなジークフリートをよそに、ブリュンヒルデは次なる試練の内容について語りだした。
「主殿、フォールクヴァンクで待つ試練とは、恐らく、我が妹にして、オーディン神の次女たるシュベルトライテだ!アイツは男嫌いだからな、間違いなく一騎打ちを望んでくると思うぞ!!」
ジークフリートは、思い出した。
九つの試練、それは、各地にある女神の封石、その封印を全て解き、彼女たち全員から真の主と認められた時、ヴァルハラへの道が開くというものだった。
「もちろん正妻の座は、私のものだがな!!」
と、試練の内容を開示した時と同じセリフを、ブリュンヒルデは言った。
ブリュンヒルデは、姉妹たちを側室として迎えるよう、ジークフリートに提案していたのだった。
ジークフリートは、顔を赤くして答えた。
「王位継承者になっただけなのに、もう後宮の話か?」
「王たるもの、それくらいの器量は必要だぞ。」
「気が早過ぎるるだろ、その前に、王国を復活させなきゃならないだろ?」
その言葉に、ブリュンヒルデは、大きく頷いた。
「そうとも!そしていずれ、主殿は世界の王となるのだ!!!」
身振り手振りで、大袈裟に語るブリュンヒルデを見ながら、ジークフリートは、力無くハハハと笑った。
「フォールクヴァングに着くまでに、私と互角になるまでにはなっておかないと、シュベルトライテに殺されてしまうかもしれんからな!特訓は毎日行うぞ!!」
(俺・・・早まったかも・・・。)
シュベルトライテ名前だけ、登場!!ヒルデの普段着は、古代ギリシャ風です。ヒラヒラですね。