女神の審判
己の耳朶を叩く母の激励に、リンドブルムは奮い立った。
「ウオオオオオオオオオ!!」
リンドブルムから立ち昇る闘気が、赤い光から黄金の輝きに変わる。
それは、紛れもない神気の発動であった。
「勝利の女神を味方につけたっスか・・・ここからが本当の勝負ってことっスか?」
ゲルヒルデもその体から、神気を迸らせる。
「ええ!!決着といきましょう!!」
雷鳴の斧槍を振るうと、それはそのまま、恐ろしい威力の衝撃波となる。
衝撃波は、ゲルヒルデの横をすり抜け武舞台そのものを揺るがせる。
「目覚めたてでなんて威力だよ!」
ジークフリートも、リンドブルムの力に驚きを隠せない。
「流石は、ガルガンチュアの娘ということか・・・」
「それは違うぞ、主殿」
ジークフリートの横に立つブリュンヒルデが、リンドブルムから目を逸らさずに答える。
「彼女は、リンドブルム!勝利の鐘を鳴らす者だ!」
再び、武器を構え合う二人の決闘者、傍観者たちが見守る中更なる戦いを繰り広げ始めた。
更に洗練された動きを披露し始めたリンドブルムの動きに、ゲルヒルデは先程まで見せていた余裕はまったく無くなっていた。
「神通力には至らないものの、何らかの境地を会得したってところっスか!?」
渾身の突きを防がれ、反撃の斬り返しを捌きつつ、ゲルヒルデはリンドブルムに語りかける。
リンドブルムは、その顔に笑みを浮かべながら答えた。
「一騎当千の境地、父ガルガンチュアの会得している力です!」
境地により付与された力が、リンドブルムとゲルヒルデの力量の差を一時的とはいえ埋めている。
それを認めたゲルヒルデは、勝負を決することにした。
「ならば、神技の一撃を持って、決着といくっスよ!!」
更に、神気を爆発させるゲルヒルデに呼応するように、リンドブルムの神気が膨れ上がる。
「承知しました!全力で行かせていただきます!!」
天に向けて振り上げたリンドブルムの雷鳴の斧槍に、雷が降り注ぐ。
雷の直撃を受けている訳だが、雷鳴の斧槍の力によって守られているリンドブルムには、全く影響がない。
ガルガンチュア王の雷神の鎚と、遜色のない規模の力に、ジークフリートは目をむく。
だが、それに相対するゲルヒルデの勇気の槍の力も凄まじいものだ。
竜巻である。
ゲルヒルデを中心に、竜巻が発生しているのである。
「我が必殺の一撃!!受けるっスよ!!疾風弩投!!!」
竜巻は、一気にその方向を横倒しにすると、その中心にリンドブルムを捕らえる。
そのリンドブルムに向け、ゲルヒルデは何と、勇気の槍を投擲したのである。
だが、リンドブルムは、その影響を一切受けていない様子で雷鳴の斧槍を振りかぶる。
「受けて立ちます!!獅電逸閃!!」
疾風と成った勇気の槍と、轟雷を纏った雷鳴の斧槍が激突した。
その瞬間、閃光、爆発、轟音が決闘広場を揺るがした。
ジークフリート達も、その余波に巻き込まれそうになるが、いつの間にか展開されていた結界がその影響を防ぐ。
「決闘の当事者でないかぎり、我等には何も影響はない。驚いたか?ジークフリートよ!」
義父レギンが、思わず防御体制をとったジークフリートに笑いかける。
「それより、決着がついたようだぞ」
ジグムントが促す先に、リンドブルムとゲルヒルデの姿があった。
二人ともに、未だ立ってはいるが、全身がボロボロの状態であった。
リンドブルムの方は、勇気の槍が発生させた真空波で、魔導装甲はズタズタで、体からは、所々血が流れだしていた。
ゲルヒルデは、リンドブルムの繰り出した神技のせいで黒焦げとなっていた。
全身が煤だらけとなり、神鎧甲の間から覗く肌も火傷で爛れていた。
その二人の間から、ヤールンサクサが進み出た。
そして、二人に向け、勝負の結果を宣言した。
「この勝負、引き分けとする!!」
その宣言と共に、決闘広場が、閃光を発して消え去った。
リンドブルムとゲルヒルデの戦い決着です!!
以下次回!!




