巨人の王国
ヨトゥンヘイム
ミズガルズの遥か北、実り少なく痩せた大地、過酷な環境のこの国は、霜の巨人族の治める領域である。
その中心、氷の山脈の地下深くに、彼らの女王であるアングルボザの治める王都、ウートガルズがあった。
その王宮、王の謁見の間、そこには照明は無く、溶岩が謁見の間の両の壁際を彩っている。
その僅かな光が、巨大な玉座に座る一人の女の巨人の裸体を浮かび上がらせていた。
その素肌は、漆黒の黒曜石を思わせるほど黒く、身体にはいった罅が、まるで脈動するかのごとく明滅を繰り返している。
その深紅の瞳は、絶えず光を放ち、髪は銀色で足に届くほど長く身体を流れるほうに覆っていた。
彼女こそ、この都の主、アングルボザである。
アングルボザは顔を上げ、目前の闇に向かい声を掛けた。
『来たか!我が子等よ!』
その闇より進み出たる影が四つあった。
三つの影は、人間とほぼ同じ大きさ、最後の一つの影はアングルボザよりも遥かに巨大であった。
「黒龍太子ファーブニル参上致しました。」
龍を象った漆黒の鎧を纏い、銀色の髪をオールバックに流した騎士が進み出た。
「獣王フェンリル帰ったぜ!!」
獣の皮で出来たコートで、鍛え上げられた傷だらけの肉体を着飾った、いかにも野性児のような、成人男性が現れた。
「夜の女神ヘル参りました。」
夜の闇を、そのまま纏ったようなドレスをきた女性が、歩み出た。
『蛇王ヨルムンガルド・・・ただ今戻りました。』
上半身は甲冑を着た武人、下半身は硬い鱗に覆われた蛇身、と言った異様な巨人が、上半身をもたげたまま這いずり出た。
その四つの存在に、アングルボザは命じた。
『憎きオーディンに封じられし、我が夫ロキは未だ目覚めぬ。一刻も早く我らが真の王を忌々しき封印より解き放つのだ!!』
敵役出ました。カラスです。ちなみにファーブニルは本来アングルボザの息子ではありません。