勇者の証
グラズヘイムの主、フリッグ。
主神オーディン神の妻であり、戦乙女達の母。
金色の玉座の上で、ジークフリートを迎えた女神のその姿は、ブリュンヒルデ達の姉といってもよいほど若々しい。
実際、ブリュンヒルデや、ヤールンサクサから話を聞いていなければ、勘違いしていたに違いない。
「このような姿で申し訳ありません。勇者殿。早速ですが、貴方には勇者の証たる魔導巨神を授けようと思います」
フリッグのその言葉に、ジークフリートは一瞬、何を言われたか理解できなかった。
「あの・・・今何と・・・?」
ジークフリートの問いに、いち早く答えたのは、ブリュンヒルデであった。
「ああ、主殿。お母様は、あの黄金の玉座、フリスズキャールブに座って、全ての世界を見守っているのだ。そして、このヴァルハラ神殿に招くに相応しい英霊の魂を見出して、配下の戦乙女に回収させるわけだ。それ故に、軽々しくフリスズキャールブから立ち上がることが出来ないんだよ」
「そっちじゃなくて!!」
少々的外れな答えにツッコミを入れたジークフリートに、悪戯っ子のような笑みを浮かべたブリュンヒルデが、舌を出しつつ言葉を続けた。
「冗談だよ!主殿。・・・そう!勇者の証とは、即ち魔導巨神のことだ!」
ジークフリートの脳裏には、虹の橋の番人、ヘイムダルの巨大な姿が思い出された。
「あの巨神を、俺に与えてくれるというのか?一体何故だ!?」
「それについては、私が答えましょう」
ジークフリートは、自らの質問に答えたフリッグに向き直った。
「確かに、貴方の試練は、未だ半ば。しかし、勇者としての資格は、ヘイムダルに勝利したことで既に会得しています。そして、これから後、貴方の前に立ちはだかるのは、ヨトゥンヘイムの魔神族、そして、霜の巨人族でしょう。魔導巨神はその戦いための鎧。身体的な差を埋め、尚且つ勝利するためには、絶対に必要なものです。どうか、受け取ってほしい」
そう言うと、フリッグはヤールンサクサに向き直った。
「ヤールンサクサ、貴女は勇者殿を、魔導巨神の格納庫まで案内してあげてください」
「承知した!では、フェンサリルの鍵を渡してもらおう」
ヤールンサクサの言葉に、フリッグは頷くと、右の手を軽く振るった。すると、ヤールンサクサの目の前に、金色の鍵が出現した。
「あれが、魔導巨神の格納庫のある離宮、フェンサリルの鍵だ。ここ天界の至宝、魔導巨神の管理は、戦乙女でも最高位の女神にしか扱えないものなのだ」
ジークフリートの横に立つブリュンヒルデがそう補足してくるが、正直それがどんなに凄いことなのか、理解が追い付かない。
「さ!行こうか、勇者殿!」
ヤールンサクサはそう言うと、玉座の間の横にある扉へと向かった。
「では、また後程・・・」
フリッグのその言葉に、ジークフリートは一礼すると、ヤールンサクサの後を追っていった。
ジークフリート達が扉の向こうへ消え、少し時がたった頃、フリッグの玉座の間に、再び来客があった。それは、フリッグが呼び出した存在であった。
『フリッグ様、お召しにより参上仕りました』
扉の向こうから響く、深みのある声に、フリッグは答えた。
「お入りなさい」
フリッグの承認を得て、黄金の扉が開く。扉の向こうから現れたのは、白銀の魔導装甲を纏った長身の不死の兵士であった。
不死の兵士は、玉座に座るフリッグの前に跪くと、兜を脱いで一礼し、名乗りを上げた。
『ヴァルムンクが王、ジグムント参りました。して、何用でありましょうや?』
遂に、ジグムント王との再会迫る!
そして、魔導巨神との邂逅!
それは、新たな戦いの始まりとなります!
以下次回!!




