ヤサグレ剣士の冒険譚
人の運命は不思議なものである。
光の都、ミズガルズ、そこに数奇な運命を辿った青年がいた。
その名は、シグルドという。
どう数奇なのかというと、一言でいえば、彼はこの世界の住民ではなかった。
二十年前、この世界に転生したらしいのである。
らしいというのは、そのあたりの記憶が曖昧になっているということ、そして、漠然とではあるが、前世の記憶というものがあることであった。
しかし、シグルドとなった青年は歓喜した。何者でもなかった前世、そして、突如与えられた第二の人生、剣と魔法の世界は、シグルドにとって全てを叶えさせてくれる理想郷に見えた。
強靭な肉体は容易く富と名声をシグルドに与え、その若さで、ミズガルズの王を守る立場になる親衛隊の団長に大抜擢されたのだ。
だが、順風満帆であったのもそこまでであった。
彼には心を許した親友と、心から愛する女性がいた。
女性との間には身分の差があり、平民から出世したシグルドにはどうすることも出来ないことであったが、その折、魔神族の大侵攻が始まり、その戦に参加したシグルドは大戦果を挙げた。
押しも押されぬ英雄となった彼は、意気揚々と国へ帰った。
そこで待っていたのは、既に人妻となった女性と、その女性を妻とした親友の姿だった。
「どうか、貴方も私達の結婚を祝福して下さい」といった女性に、「ふざけんな!!」と言って、国を出奔したのは、つい先日の事だ。
今でも、「ふざけんな!!」と言った瞬間の彼女の顔が忘れることが出来ないでいるシグルドは、一人、荒野を彷徨っていた。
そして現在、ミズガルズの西、国境の外れの森にシグルドはいた。
「やれやれ、導きから外れただけで、これか・・・」
呟いたシグルドの前には、身長3メートルほどのトロールがいた。
『グオオオオオォォォ!』
トロールはシグルド目掛けて拳を振るった。
当たれば、人間など、容易く即死させる一撃である。
シグルドは、その軌道から身体を逸らせながら、旋回しながら飛び上がった。
ズババッ!!という音と共に、トロールとすれ違った彼は、音もなく着地した。
「相手にならん・・・」
その言葉と共に、首と腕を切り落とされたトロールが、ズズン!と崩れ落ちた。
カウンター技術は、この世界で手に入れたシグルド最大の武器である。
いつの間にか抜かれた剣を鞘に納めつつ、左の手に握られた宝珠を見て思った。
(あの爺さん何者だ?)
光を放ち、森の奥を示す宝珠を見ながら、シグルドは、二日前に、辺境の街の酒場で出会った老人のことを思い出していた。
初めまして皆さん!!勢いで書いてしまいました。
北欧神話好きの人も、そうでない人も、読んでくれるとうれしいです。
駄文ですが、温かい目で、読んでやって下さい。