グラズヘイム
未だ機嫌の良くないヴィーを連れ、ブリュンヒルデ達を追いかけた。部屋を抜けた先は、天井の高い長い通路となっており、その先には巨大な扉があった。ブリュンヒルデ達はその前でジークフリートの到着を待っていた。
「遅いぞ主殿!」
「すまん!だが、まだヴィーの自己紹介がまだだったろう?ヤールンサクサ様、こちらは俺の相棒、炎の魔剣の化身、ヴィーだ。さあ、ヴィー」
「ふん!まあ、よろしく頼むぞ。一応、ご主人の顔を立てておいてやる」
本物の女神、しかもブリュンヒルデ達よりも上位の女神に対し、傲岸不遜に言い放つヴィーであったが、ギョッとするジークフリートを他所に、ヤールンサクサは快活な笑い声を発した。
「ハハハッ!これは失礼した。剣に宿った精霊殿か。孫娘に会った喜びに、つい我を忘れてしまったようだ許されよ」
余裕を持って答えるあたり、できた大人である。というか、大人どころではない年月を生きてきた神である。このくらいは当然なのであろう。
「では!改めて皆をグラズヘイムへ向かい入れよう!」
ヤールンサクサの声に従い、巨大な門がひとりでに開き始める。外の世界からの光がジークフリート達を包んでいく。その光が晴れたとき、ジークフリートの前には、正に神々の世界と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。
「こ、これが・・・」
「そうだ!ようこそ主殿!我等の故郷へ!!」
ブリュンヒルデの示す方角には、空中に浮かぶ大陸が無数にあった。それぞれに、虹の橋の門と同じ建築物が建てられており、森や湖なども見受けられた。そして、空には金色の雲に覆い尽くされているが、雲自体が発する光が、その世界を照らしていた。そして、ジークフリートが目を凝らすと、大陸間を行き来する飛行船のようなものまで見ることが出来た。
天界グラズヘイム、そこは、地上までとは比べるべくもない程、高度に発展した魔導科学の進んだ世界である。ジークフリートはそう認識した。
「さて、ジークフリート殿。ここはまだグラズヘイムの入り口にすぎぬ。貴方はここでやらねばならぬことがあるからな」
そう言って先導するヤールンサクサの前には、発着場らしき場所が広がるだけであったが、彼女がそこで振り返ると、そのタイミングに合わせたのであろうか、光り輝く翼が下方からせり上がって来た。
「後は、目的地まで、ゆるりと船で行こうか」
白き白亜の船体が出現し、その威容を現した。船とヤールンサクサは言っていたが、地上の船などとは機構そのものが違う。ジークフリートには宇宙船に見えていた位である。
「おお!これは懐かしい。父上の船、神船ファルマチュールではないか!」
「そうだ!これに乗って、勇者殿には、フリッグの住まう居城、ヴァーラスキャールブへと来てもらう。そこで、フリッグに勇者として認定してもらうのがその目的だ」
勇者として神に認められる。それは、この世界住人にとってはこの上ない名誉である。ジークフリートは余り気乗りはしなかったが、ブリュンヒルデ達と共に先に進むことに否はなかった。
「ここまで来たんだ。行くさ!!」
それは、自分自身に言い聞かせた言葉であったかもしれない。しかし、その言葉に頷く仲間達に、力強いものを感じながら、ジークフリートは、ファルマチュールに向かって、一歩を踏み出した。
ようやく、グラズヘイムヘ入国出来たジークフリート一行ですが、まだまだ何か起こりそうな予感、期待と不安を胸に、ジークフリートは進みます。
以下次回!!