玉座の間での語らい
戦いから一夜明けたグランネイドルでは、ニーズホッグをはじめとする蛇神族によって破壊され尽くした街の復興が始まっていた。街のいたる所で、金槌の音が聞こえ、戦後間もないというのに、活気に溢れていた。その理由の一つである一人の女性が姿を現すと、ドゥベルグ達はそろって敬意を込めた挨拶を口にした。
「おはようございます!ヘルムヴァーテ様!」「女神様!また手伝いにいらっしゃったんですかい!?」「ありがてぇ!本当にありがてぇ!!」「お前ら、女神様に負けねえくらい気ぃ引き締めて行けよぉ!!」「「「おおーー!!」」」
この街の守護女神でもある、ヘルムヴァーテの来訪である。いやがおうにも、町民達のボルテージは上がっていった。実際、彼女はどこへいっても、即戦力であった。全身鎧を|纏ったその身で、大の大人のドゥベルグ達が、十人かかっても動かせない大岩を、一人で軽々と担いでしまうのだ。復興作業に従事する者達にとって、この上ない助っ人なのである。
しかし、それだけではない。
「ヘルムヴァーテ様!何も貴女様がこのようなことをしなくとも!」「貴女様にそのようなことをさせるわけにはいきません!」「すまない!我々にも作業道具を貸してくれないか?ヘルムヴァーテ様に代わって我々が作業を手伝う!!」
それは、先日の戦いで、エキドナの蛇神鎧の邪眼の効果によって石化されていたドゥベルグの守備兵達である。ヘルムヴァーテの浄化魔法によって石化を解かれた彼等は、彼女に心酔し、自主的に彼女の手助けをしているのだ。守備兵の隊長は、ブロック王に直談判し、許可を得て彼女の援護を申し出ていた。その鬼気迫る様は、ブロック王もたじろぐほどであったという。
『では~一緒に、手伝って下さいな~』
間延びしたヘルムヴァーテの返答に、その場にいた全ての男のドゥベルグ達の目じりが下がり、全員が声を合わせて答えた。
「「「「「「喜んで~~~~~~!!!!!」」」」」」
その様子に、炊き出しに出ていた女性のドゥベルグ達は、困ったものだと呆れていた。
「「「「なんだかね~」」」」
「またヘルムヴァーテ様は、外へ慰問に行かれたのか?」
玉座の間で、ジークフリートに問いかけたのはブロック王である。
「ああ、自分の守護していたこの地の住人達の為、今のうちに、自分に出来ることは何でもしたいそうだ」
ジークフリートの視線の先では、家を押し潰していた大岩がグラグラと動いたかと思うと、ニーズホッグの破壊した城壁に向かい移動を始めていた。おそらく、ヘルムヴァーテが動かしているのだろう。ジークフリートのこめかみから汗が一滴、流れ落ちた。
(おいおい・・・バカ力なんてレベルじゃねぇだろ!!味方で良かったとつくづく思うね。だが、そんな彼女等をあそこまで追い込むなんて、魔神族にも、将はいるということか・・・)
街の様子に見入っていたジークフリートの傍に、ブロック王は並ぶと、ずっと気にかかっていたことを尋ねた。
「それで、ジークフリートよ。あの巨神は天界で手に入れた物なのか?」
尋ねられたジークフリートは、グランネイドルの天井に視線を移すと、ゆっくりと自分が天界で体験した出来事を、ブロック王に語って聞かせることにした。
「少し長くなりますよ。それでもいいですか?」
「いいに決まっている!!オオイ!!誰かある!?酒と椅子を用意しろ!!今すぐにだ!!」
「「ハハッ!!」」
ブロック王は、部下に席を設けさせると、特上の酒を用意させた。
「さ!それじゃあ、じっくりと聞かせてもらおうか!お前の物語をよ!!」
それはまるで、おとぎ話を親にねだる子供のような態度であった。
遅くなりました。今回からは、ジークフリートが天界で体験した出来事が語られます。ジークフリートが手に入れた魔導巨神のことや、真に勇者となった顛末が描かれます。
読んでくださる皆さんに感謝しつつ、以下次回!!




