巨神の戦い
ニーズホッグは狼狽していた。先程まで、確かに自分はグランネイドルの城壁を破り、ブレイザブリク城まで後一歩と迫りながら、突如魔法陣に包まれ、気が付けば、周囲には見渡す限りの雪景色が広がっていたからである。
『ここは一体・・・?何が起こったというのですか!?』
『ここは、グランネイドルの天井と言われるフニットビョルグの頂上だ』
その声に、ニーズホッグは慌てて距離を取る。
そこには、自分をその恐るべき力によって抑え込んだ魔導巨神が悠然と佇んでいた。
『貴様が私をここへ!一体何者ですか!?名を名乗りなさい!!』
『魔法は俺じゃないんだが・・・そうだな、それが礼儀というものだろう・・・』
そう言うと、漆黒の巨神は、その剣を天へと掲げ、名乗りを上げた。
『我が名はジークフリート!!オーディン神によって選ばれた勇者なり!!そして、これなる巨神は、吠え叫ぶ者!!この名をその魂に刻み、地獄へ落ちるがいい!!』
ジークフリートの声と共に、吠え叫ぶ者の巨体から、真紅の炎が噴き上がる。その炎は、たちまち周辺の積雪を蒸発させ、岩肌を露出させた。
『なるほど。オーディンに選ばれた者でしたか・・・ならば、私の全力で持って叩き潰して差し上げます!!』
ニーズホッグの赤黒い蛇神鎧が、更にどす黒い紫へと変色する。
『私の名はニーズホッグ!!蛇王ヨルムンガルド様の将にして混沌の蛇!!私の全てを費やしても、貴方はここで消えてもらいましょう!!』
流線形であった蛇神鎧の各所から、角が生えていく。蛇神鎧を完全戦闘形体へと変化させたニーズホッグは、その全身から、闘気を迸らせた。
『これは、尋常ではない闘気だぞ!!ご主人!!』
先程と違い、緊張したヴィーの声が、炎の魔剣から聞こえる。それと同時に、別の声が、ジークフリートの頭に響いた。
『おそらく、己の魂すら消費して、あの鎧の出力を上げているのだ。気を引き締めて行け』
落ち着いた男性の声である。これは、魔導巨神に封じられた英霊の声である。二人の声に、ジークフリートは頷くと、その闘気を爆発させた。漆黒の巨体が、金色に染まる。
『神気発勁、こちらも最初から全力で行かせてもらう!!』
ジークフリートの言葉に、蛇神鎧の下でニーズホッグは目を細める。彼は笑っているのである。彼は、表情というものが無い。そのような顔の構造ではない為である。しかし、この時確かに彼は笑った。それは、ヨルムンガルドへの忠誠を示せることへの喜びか、死力を尽くして戦うに足る相手に巡り合えたからなのか、それは彼にも分からなかった。
そして、次の瞬間、巨大な二つの存在が唸りを上げて激突した。衝撃波に大地は震え、フニットビョルグの天空回廊を揺るがせた。
対ニーズホッグ戦開幕です!!
以下次回!!
と言ういい所なのですが、来週は出張です。次回更新は金曜日以降となります。