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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
勇者降臨の章
189/211

一つの終戦

 グランネイドルの市街地で、二つの巨大な存在がぶつかり合っていた。

 ジークフリートの駆る吠え叫ぶ者(ダイオーズ)と、蛇将ニーズホッグである。吠え叫ぶ者(ダイオーズ)の一撃を受け止めたニーズホッグは、自身の持つ四本の腕にあらん限りの力を込めた。


『馬鹿め!!私の腕は、四本あるのですよ!!』


 そう言うと、上腕の二本の円月刀(シミター)で、吠え叫ぶ者(ダイオーズ)の展開した炎の魔剣(グラム)を防御したまま、残った二本の腕で、吠え叫ぶ者(ダイオーズ)のガラ空きの腹部に攻撃を加えようとした。


『ムゥン!!』


 吠え叫ぶ者(ダイオーズ)からジークフリートの声が響くと同時に、ニーズホッグが地面へ押し付けられる。


『ヌオッ!?何という(パワー)!!こちらは蛇神鎧(スキュレイ)(まと)っているというのに!!』


 反撃に転じようとしていたニーズホッグであったが、最早それどころではない。四本ある腕を総動員しなければ、吠え叫ぶ者(ダイオーズ)(やいば)を止めることが出来ないのだ。そうして、ニーズホッグの動きを封じたジークフリートは、ジークルーネに叫んだ。


『今だ!!頼む!!ルーネ!!』


 その声に、応えるように、巨大な魔法陣が、吠え叫ぶ者(ダイオーズ)をニーズホッグごと包み込むように展開した。


「『破壊の杖(ヴァナルガンド)よ!契約の元、我が主の望みし場所へ通じる門を開け!!明星の門(スターゲート)!!』」


 ジークルーネの魔法が発動し、二つの巨大な存在が、光と共にグランネイドルの街から跡形もなく消える。そして、グランネイドルの街に、一瞬の静寂が戻った。


『馬鹿な!!』


 その声は、蜥蜴人(リザードマン)の王、ボティスが発した声であった。未だブロック王との戦いに決着は付いていない。しかし、突如、ブロック王の援軍として現れた二人の戦乙女(ワルキューレ)によって、形勢は逆転していた。二人が武器を振るう度に、数人の蜥蜴人(リザードマン)の戦士達が吹き飛ぶ。それだけで、ある者は身体の一部が吹き飛び、またあるものは絶命していく。そこへ、ようやくニーズホッグが城壁を破り、市街地へと突入してきた。グランネイドルを落すことが出来る。それは、先程まで決定された未来であった。しかし、それは一体の魔導巨神(デウス・エクスマキナ)の出現によって回避されてしまった。いや、おそらくあの魔法は女神の力に違いない。そう結論づけたボティスは、忌々しげにリンドブルムとゲルヒルデの二人に振り返った。


『憎むべきはヴァルハラの血族か!この恨みは決して忘れぬぞ!!』


 そこへ、エキドナが駆け付けて来た。彼女の全身ボロボロの蛇神鎧(スキュレイ)女胴蛇(メドーサ)を見て、ボティスは決断する。


『引くに()かず!!』


 ボティスは、エキドナに駆け寄ると、その安否を確かめた。


『エキドナ様!ご無事で!!』

『ああ・・・しかし、これまでだよ。悔しいがここは撤退するしかない。グランネイドル攻略は失敗だ。今は、一刻も早く引くよ!』

『承知!!』


 ボティスは、配下の者に目配せした。すると、部下の一人が、背中から銅鑼(どら)を取り出し、鳴らし始めた。


 ゴン!ゴゴン!ゴン!ゴゴン!


 その音を聞いた蜥蜴人(リザードマン)達は、一斉にグランネイドルの城外に向け走り出す。街中の至る所から、銅鑼(どら)の音が鳴り始め、正に風の如き速さで、蜥蜴人(リザードマン)達は撤退を始めた。


『私等も引くよ』

『無念です・・・』


 二人は、そう言うと、走り出した。


 「逃げる気か!!卑怯者め!!」


 遥か後方、殿(しんがり)の為に、死兵となった同胞の壁の向こうで、ブロック王の怒声が聞こえるが、ボティスは振り返ることは無かった。今の自分は、個人の思惑だけで戦っているのではない。崇高な理念と輝く未来の為なら、自分自身の誇り(プライド)など(ドブ)に捨てても後悔など微塵も感じなかったのである。そして、それは、自分の横を並走するエキドナも同じであると、確信していた。

 グランネイドルの戦いは終りました。しかし、ジークフリートとニーズホッグの決着が残っています。

 以下次回!!

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