城壁の戦い
ズガアアアアアアアアアアアン!!!!
グランネイドルの街が揺れる。それは、ニーズホッグの攻撃による衝撃である。だが、城壁を守る守備兵達はどうすることも出来ない。彼等の用意した弩弓の鏃は、ことごとくニーズホッグの蛇神鎧に弾かれてしまい効果がない。しかも、攻撃による衝撃は、彼等を立つことさえも困難にしていた。これでは、反撃どころの話ではない。すでに、守備兵の中には、城壁から転落し、地底湖に落ちて溺死してしまう者も出ていた。
「クソッ!!このままでは、城壁がもたないぞ!!増援はまだなのか!!」
「無理ですよ隊長!街の中にも、敵が侵入しているらしく、こちらにまわす兵員は無いとのことです!」
必死に、反攻作戦を展開していた、守備兵の弩弓隊隊長は伝令の返答に愕然とした。このままでは、後数度あの攻撃を受ければ、城壁は砕け散り、グランネイドルは、あの魔神族の猛攻を前にあえなく陥落するだろう。そうなれば、ニダヴェリールに住む、全てのドゥベルグ達は、国を失う事になる。それだけは、絶対に許してはならないことであった。
「このまま黙ってあの魔神族に、我等の国を蹂躙されてなるものか!!次の矢を装填しろ!!諦めてなるものか!!」
隊長の言葉に、再び士気を取り戻した守備兵達の目に闘志が宿る。だが、その場に場違いな、鈴の鳴るような声が響いた。
「その意気は買いますが、ここは私に任せてもらいましょう」
守備兵達は、その声の人物を振り返ると、一様に跪いた。そこには、破壊の杖を携えたジークルーネが、水色のローブを靡かせながら現れた。
「これは!!英知の女神様!!ですが、任せるとは一体!?」
その問いに、対する答えは、ニーズホッグの次なる一撃に対して行ったジークルーネの魔法によって示された。
『我等に災いを成す悪しき力を退けよ!!守護結界陣!!』
ニーズホッグが、止めとばかりに繰り出した一撃が、ジークルーネの展開した魔法陣によって受け止められる。先程までの、崩れかけの岩壁の感触ではなく、まるで巨大な鉄塊にぶち当たったような感覚に襲われたニーズホッグは、城壁の上に立つジークルーネの姿を認め、先程の仕業が、誰によるものかを知った。
『またしても忌々しい女神めが!!だが、今度は引かぬぞ!!ヨルムンガルド様に与えられた蛇神鎧の力!!見るがいい!!』
その言葉と共に、ニーズホッグの鈍色の蛇神鎧の全身に刻まれた刻印が、真っ赤な光を放ち始める。それは、眩いというには程遠い、闇が色を持ったのではないか、という光である。その光は、ニーズホッグの全身に広まり、その全身を赤黒く染めて行く。
『更に!!これでどうだ!!』
ニーズホッグの四本の腕が、その口に呑まれ、再び引き抜かれると、そこには四本の円月刀が握られていた。ニーズホッグは、その蛇身を大きく逸らせると、先程までの攻撃を上回る勢いで全身をジークルーネの結界に叩きつけた。
ズギャアアアアアアアン!!!
ニーズホッグの持つ巨大な円月刀と、ジークルーネの結界が激突し、まるで金属同士がぶつかったような音を立てる。その規模は、グランネイドル全体を揺るがせるほどである。
「ウグッ!!」
これには、流石にジークルーネも苦悶の声を洩らした。結界を示す立体魔法陣が明滅する。本来、破壊の杖は、攻撃魔法の威力を上げることに特化した武器である。ヴィーグリーズにおいて、ジークフリートと、ガルガンチュアの神技の激突の折は、闘技場に施された魔法結界の助けを借りていたのだ。今の彼女は、自分自身の魔力だけで、防御結界を維持しているのである。
「これはなかなか、厳しいですね」
独り言を呟くジークルーネの額に、汗が浮かんでいた。
ジークルーネやっと参戦!!
旗色は悪いですが・・・三つ巴となった戦いに、どのような結末が訪れるのか!?
以下次回!!




