反撃の狼煙
シュベルトライテは、自分の迂闊さに悔しさを隠すことが出来なかった。守備兵達に、ここは自分に任せ、城壁内に侵入した蜥蜴人の追撃に向かわせておけば良かったのだ。目の前の敵を過小評価しすぎた結果である。
『これはいいね!!』
エキドナは、再度身体を大きく振りかぶる。まるで、いかにもこれから攻撃すると宣言するようなものだ。しかし、エキドナの大振りの攻撃を、シュベルトライテは避けることなく受け止めた。エキドナの双刀と、シュベルトライテの竜斬刀が、ガッキリと噛み合う。
「ぐうっ!!」
たとえ神鎧甲で筋力を強化できるとしても、エキドナもまた蛇神鎧女胴蛇でその力を底上げしているのだ。種族としての特性もあるだろうが、シュベルトライテは特に、速度を上げるよう神鎧甲を設定していたのである。その力量は、伯仲しているが、エキドナはそれも見越して、全力での攻撃を選択したのであろう。では、何故その攻撃を避けられないのか?
『守らなきゃならないものがあるのは大変だねぇ!女神様!!』
「やはり、それを承知で、先程の全力攻撃ですか。しかし、それも戦術、卑怯とは言えませんね」
『へえぇ、正義なんてものを司る割には、なかなか心得ているじゃないか!』
エキドナの挑発めいた言葉にも、シュベルトライテは一切揺るがない。
「貴方の目にも、己が正義を貫こうとする意志が見えます。戦場では、互いに己の立場がある以上、それぞれに正義があり、勝利を持ってその正しさを示すしかないのです」
エキドナは、シュベルトライテの物言いに苛立ちを覚えていた。
『ならば、弱者は黙って強者の言を受け入れろとでも言うつもりかい!?これは、とんだ女神様もいたものだねぇ!!』
再び、大きく振りかぶった一撃が放たれ、シュベルトライテはその威力に耐えきれず吹き飛ばされた。だが、未だその目は死んでいない。そこには、確固たる決意が現れていた。
「それは違います。真に正しき者ならば、運命が勝利に導きます。それが、この世界の理です。強者といえど、それが悪であるのなら、いずれ正しき者に撃ち滅ぼされるということです」
そして、シュベルトライテは、蜥蜴人達の向かっていった方角を指し示した。
「見なさい!正義の前に、悪が潰える様を!!」
エキドナは油断なく、指し示された方角を見た。ブレイザブリク城の城門から、巨大な鉄の箱のようなものが、蜥蜴人達の軍勢に突き進んで行く。それは、ドゥベルグの鉄騎兵団による盾の陣形である。兵士一人一人が、長方形型の壁盾を持ち、それをまるで、戦場を移動する要塞のように進軍する為の陣形である。その中心の盾が取り払われ、そこから盾で作られた階段を登って現れた者がいた。
青銅色の魔導甲冑をその身に纏い。戦鎚と大盾を装備した、ニダヴェリールの王、ブロック王その人である。
「やあやあ!遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!!我こそは、鉄槌王ブロックなり!!我が戦鎚の贄となりたい者からかかって来るが良い!!」
それは、グランネイドルの都市全てに行き渡る大音声であった。
「戦いは、まだ終っていません!今度はこちらの番です!!」
シュベルトライテはそう言うと、滑るような歩法で、エキドナに詰め寄った。反撃の時は、始まったのである。
ブロック王出陣!!でも、異世界なのに、名のりあげが戦国時代です。(笑)
そして、戦いの行方は・・・
以下次回!!




