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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
勇者降臨の章
180/211

反撃の狼煙

 シュベルトライテは、自分の迂闊さに悔しさを隠すことが出来なかった。守備兵達に、ここは自分に任せ、城壁内に侵入した蜥蜴人(リザードマン)の追撃に向かわせておけば良かったのだ。目の前の敵を過小評価しすぎた結果である。


『これはいいね!!』


 エキドナは、再度身体を大きく振りかぶる。まるで、いかにもこれから攻撃すると宣言するようなものだ。しかし、エキドナの大振りの攻撃を、シュベルトライテは避けることなく受け止めた。エキドナの双刀と、シュベルトライテの竜斬刀(シルドレイク)が、ガッキリと噛み合う。


「ぐうっ!!」


 たとえ神鎧甲(モノケロス)で筋力を強化できるとしても、エキドナもまた蛇神鎧スキュレイ女胴蛇メドーサでその力を底上げしているのだ。種族としての特性もあるだろうが、シュベルトライテは特に、速度を上げるよう神鎧甲(モノケロス)を設定していたのである。その力量は、伯仲しているが、エキドナはそれも見越して、全力での攻撃を選択したのであろう。では、何故その攻撃を避けられないのか?


『守らなきゃならないものがあるのは大変だねぇ!女神様!!』

「やはり、それを承知で、先程の全力攻撃ですか。しかし、それも戦術、卑怯とは言えませんね」

『へえぇ、正義なんてものを司る割には、なかなか心得ているじゃないか!』


 エキドナの挑発めいた言葉にも、シュベルトライテは一切揺るがない。


「貴方の目にも、(おの)が正義を貫こうとする意志が見えます。戦場では、互いに(おのれ)の立場がある以上、それぞれに正義があり、勝利を持ってその正しさを示すしかないのです」


 エキドナは、シュベルトライテの物言いに苛立(いらだ)ちを覚えていた。


『ならば、弱者は黙って強者の言を受け入れろとでも言うつもりかい!?これは、とんだ女神様もいたものだねぇ!!』


 再び、大きく振りかぶった一撃が放たれ、シュベルトライテはその威力に耐えきれず吹き飛ばされた。だが、未だその目は死んでいない。そこには、確固たる決意が現れていた。


「それは違います。真に正しき者ならば、運命が勝利に導きます。それが、この世界の(ことわり)です。強者といえど、それが悪であるのなら、いずれ正しき者に撃ち滅ぼされるということです」


 そして、シュベルトライテは、蜥蜴人(リザードマン)達の向かっていった方角を指し示した。


「見なさい!正義の前に、悪が潰える様を!!」


 エキドナは油断なく、指し示された方角を見た。ブレイザブリク城の城門から、巨大な鉄の箱のようなものが、蜥蜴人(リザードマン)達の軍勢に突き進んで行く。それは、ドゥベルグの鉄騎兵団による盾の陣形である。兵士一人一人が、長方形型の壁盾(タワーシールド)を持ち、それをまるで、戦場を移動する要塞のように進軍する為の陣形である。その中心の盾が取り払われ、そこから盾で作られた階段を登って現れた者がいた。

 青銅色の魔導甲冑(マギフレーム)をその身に纏い。戦鎚(バルディッシュ)大盾(ラージシールド)を装備した、ニダヴェリールの王、ブロック王その人である。


「やあやあ!遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!!我こそは、鉄槌王ブロックなり!!我が戦鎚(せんつい)の贄となりたい者からかかって来るが良い!!」


 それは、グランネイドルの都市全てに行き渡る大音声であった。

 

「戦いは、まだ終っていません!今度はこちらの番です!!」


 シュベルトライテはそう言うと、滑るような歩法で、エキドナに詰め寄った。反撃の時は、始まったのである。

 ブロック王出陣!!でも、異世界なのに、名のりあげが戦国時代です。(笑)

 そして、戦いの行方は・・・

 以下次回!!

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