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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
天への道の章
166/211

大浴場での一幕

「凄い・・・」


 ジークフリートは、大浴場に着くと思わず感嘆の声を洩らした。大浴場の広さもさることながら、その上部は吹き抜けとなっており、そこから大空洞の岩壁が視認できるのだが、それがまるで星々をちりばめた夜空のように見えたのである。


(すげ)ーだろ!あの星に見えるのは、全部発光石(フラッシュストーン)よ!俺達ドゥベルグは、人間に比べれば、身体は小せえが、でけえもんを造らせたら、どんな種族にも負けねえ!それが、俺達の誇りよ!」


 ブロック王が、腰巻のみを身に着け現れた。当然であるが、男性の浴衣は、上半身が裸である。まるで、筋肉の塊の様な身体に、戦士として戦ってきた証しである様々な傷が刻まれていた。聞く所によると、二十数年前に起こったゴブリン族の大蜂起の際、ドゥベルグ達は、偉大なる王を失い、その後を引き継いだのが、その弟であったブロック王であったらしい。その治世は、困難を極めたらしいが、今では誰もが認める真の王として立つ偉大な先人である。


「凄いですね・・・貴方も紛れもなく偉大な英雄の一人だ」


 ふいに、ジークフリートが呟いた言葉に、ブロック王は自嘲気味に笑いながら、手桶で湯をすくい、全身に浴びせた。


「そうでもねえよ・・・本当に凄かったのは、俺の兄だ。ドゥベルグの英雄王、シンドリ。その名は、今でも伝説になっているぜ・・・」


 ジークフリートは、オヤッと不思議に思った。どこかで聞いた名だ。それが、どこであったかはっきりと思い出せない。二人は湯船に浸かりながら、先の戦いの疲れを癒し始めたが、ブロック王の話には続きがあった。


「おそらく、ニーズホッグの奴が進入してきた地底湖の中の水脈は、ゴブリン戦役のはた迷惑な遺産てとこだろうな・・・その全ては、把握出来ていなかったが・・・」


 水と聞いて、ジークフリートは思い出した。ウルザブルンの船匠、シンドリのことである。ジークフリートは試しに聞いてみることにした。


「ブロック王、そのシンドリと言う名は、ドゥベルグの者達にとっては、よく使われている名なのですか?」


 突如振られたその質問に、ブロック王は、質問の意図が解らなかったが、(ひげ)を蓄えた顎に手をあてて考え込んだが、その答えはすぐに出た。


「いや!シンドリなどと言う名は、我が兄以外では使用などされていないだろうな・・・それがどうかしたか?」


 ジークフリートは、言うべきかどうか迷ったが、結局の所、ブロック王に、船匠シンドリのことを包み隠さず話すことにした。話を聞いている内に、ブロック王の顔は、困惑から一転、物凄い形相になっていた。


「そ、それは本当か!?そのウルザブルンという街に、シンドリというドゥベルグの船大工が居ると・・・」

「ああ・・・確か、前町長で、ウルザブルンの街を造船と漁業の街に変えたのも彼だと聞いたな・・・それと、養女にしたナターシャを育てる為に、街に残ったとも聞いたな・・・」


 ジークフリートが答えると、ブロック王は湯船から立ち上がって叫んだ。


「王様の役を俺に押し付けておいて、自分は悠々と趣味に走りやがって!!絶対連れ戻してやるぞ!!兄者!!」


 大浴場に、ブロック王の声が反響する。振り上げた拳が、ブロック王の意志の固さを見たような気がしたジークフリートであった。


「随分盛り上がっているようだな、主殿!!」


 何故か、聞こえてはならない声が聞こえた気がする。恐る恐る振り返った先には、やはり、ブリュンヒルデがいた。浴衣が身体に張り付き、その見事なプロポーションがくっきりと見えてしまっている。湯気が立っているが、あまり視界の妨げとは成っていない状況である。


「ど、どうしてこっちにいるんだよ!?女湯は隣だろ!!」

「うむ!せっかくであるから、背中を流してやろうと思ってな!」

「姉上!!少しは慎みを持って下さい!!」


 今度は、シュベルトライテまで、入って来た。どうやらブリュンヒルデを連れ戻しに来たらしいが、彼女も浴衣のままである。しかし、乱入者はそれに(とど)まらなかった。


「ここが勝負所っス!!リンちゃん行くっスよ!!」

「わ、私はいいですよ!ゲルヒルデ様!!」


 なんと、ゲルヒルデが、リンドブルムを引っ張って、男湯に入って来たのである。ジークフリートが慌てふためく中、ブロック王は、さっさと逃げ出していた。

 これが、年の功というものである。


 その頃、女湯の方では、ジークルーネとヴィーがゆっくりと湯船に浸かりながら、その喧騒を聞いていた。


「やれやれ、騒がしいのう・・・風呂はゆっくりと浸かるものじゃ・・・のう、お姉様・・・」

「そうですね・・・しかし・・・」


 ジークルーネの視線の先には、ヘルムヴァーテがいた。ジークルーネは、ヘルムヴァーテより聞いた、ジークフリートの戦う相手に、今回の試練の壁の高さを感じていた。


「天空回廊の守護者、ヘイムダル・・・魔導機神(デウスエクスマキナ)の身体を持つ神の一人・・・」


 その瞳は、スヴェルトアールブの遥か上、地上の山の頂にある遺跡へと、向いていた。

 ついに、明らかとなる試練の内容!それは、ヘイムダルとの戦いであった。

 北欧神話では、虹の橋(ビフレスト)の番人と呼ばれる彼ですが、ここでもその立場はあまり変化はありません。

 以下次回!!

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