宝剣の復活へ
ブリュンヒルデ達が、ブレイザブリク城の大浴場に入っている頃、ジークフリートは、ブロック王と二人きりで、玉座の間にいた。ニダヴェリールに来た目的の一つを遂行する為である。
「綺麗に、スッパリと断ち切ってるな。これはお前さんがやったのか?」
「そうです。ブリュンヒルデの封印を解く際、我が父である、剣王ジグムントを倒す為に、武器の破壊を狙ってそうなりました。」
「ふうん・・・」
ブロック王が見ているのは、ジークフリートが実の父親であるヴァルムンクの王、ジグムントより託された氷の魔剣ノートゥングであった。そう、ジークフリートは、ブロック王にノートゥングの修理を依頼していたのだ。
そのノートゥングの状態から、ブロック王はジークフリートの実力を推し量った。
(なるほど・・・ガルガンチュアに勝ったというのは嘘じゃねえな。この切り口の見事なことから、境地の二、三は会得しているだろうが・・・)
ブロック王としても、ジークフリートの依頼を受けてやりたかったが、一つだけ問題があった。
「ここまで純度の高いミスリル鋼はそうそうねぇ・・・直してやりたくても材料が無けりゃどうしようもねえよ・・・」
ミスリルは希少金属で、ニダヴェリールでも、年間で採掘できる量は微々たるものである。いかに女神の契約者とはいえ、軽々しく差し出せるものではなかった。
しかし、ジークフリートは急に何かを思い出したのか、懐の魔導宝庫から、もう一振りの剣を取り出した。養父レギンの形見の剣、ブルートガングである。ノートゥングと同様に、真っ二つに折れてしまっているもの、その輝きは、未だ鉄でも楽々と切り裂くような鈍い光を発していた。
「その材料、この剣ではいかがでしょうか!?」
ブロック王は、その剣を手に取り、しげしげと眺めた。確かに、純度の高いミスリル鋼である。強度も、量も申し分ない。ブロック王はニヤリとすると、ジークフリートに答えた。
「これなら、充分すぎるくらいだぜ!!ただ・・・修繕は、エルドフリームニルが直ってからになるだろうがな」
その答えに、ジークフリートは飛び上がらんばかりに喜んだ。自分の実父と養父、その二人の剣が一つとなり、再びヴァルムンクの宝剣となるのだ。ジークフリートは我知らず運命の様なものを感じていた。
「話は聞かせて頂きました。ご主人様」
その声に振り向くと、そこにはヴィーの手を引きながら入室してきたジークルーネの姿があった。
ジークフリートは、オヤッ!?と思った。そう言えば、ここ最近、ヴィーの元気が無かったように思われたのである。
「ヴィーの奴どうしたんだ?なにかあったのか?」
ジークフリートの質問に、ジークルーネが苦笑する。
「ここのところ、私はタングニョーストの操縦を教える為、メリーダに付きっきりでしたからね。すっかり拗ねてしまったのですよ」
ジークフリートが、ヴィーの顔を覗き込もうとすると、ヴィーはフイッと顔を背ける。プクッと頬を膨らませ、自分は不機嫌であると主張しているようだ。二千年生きた古代竜とはとても思えない。
「ヴィー、ここの大浴場は温泉だそうだ。ジークルーネと一緒に行って来ると良い」
「本当か!!」
ヴィーが飛び付くような勢いで振り向いた。目がキラキラと輝き、すっかり元気になったようだ。
ジークルーネは小さく溜息をつくと、ジークフリートに質問した。
「よろしいのですか?エルドフリームニルの修繕は急務だと思いますが・・・」
「いいんだよ。まずは英気を養ってくれ。それが終れば、全力で修繕に取りかかってくれればいい」
ジークフリートの言に、ようやく納得したジークルーネは、ヴィーを連れて大浴場へと向かっていった。
「それじゃあ、俺達も行こう!!まずは風呂だ!!その後は、宴会の用意もしてあるぞ!!」
「ええ!?」
ブロック王は、ジークフリートの肩に手を回し、大浴場へと向かって行くが、ジークフリートは一つ気になることがあった。
「ブロック王、ここって混浴ですか?」
「残念だが違う・・・造った方がよいかのう」
ホッとするジークフリートであったが、試練を前に、その不安は大きくなる一方であった。
ノートゥングの復活が見えてきました。そして、ここしばらく元気の無かったヴィーもようやくいつもの彼女に戻ったようです。そしてようやく、その全容を見せる次なる試練!!ジークフリートは、試練を超えることが出来るでしょうか!?
以下次回!!




