救援の報酬
グランネイドルの王城、ブレイザブリク城に着くころには、住民達の異常状態は、ほぼ回復させることに成功していた。中でも、特に活躍したのが、タングニョーストに搭乗していた薔薇十字聖騎士団の女騎士達であった。団長であるエルルーンが、選りすぐった精鋭と言っていたのは真実であったのだ。特に、メリーダと呼ばれていた女騎士は、回復魔法も得意とし、他の女騎士よりも多くの住民の麻痺状態を解除して周っていた。
「本当に優秀なんだな・・・タングニョーストの操縦だけじゃなかったのか・・・」
ジークフリートの呟きに、エルルーンが激しく反応した。
「そうなんです!ジークフリート様!!彼女は頭の回転も早く、私にもしものことがあった時は、新たに団長として、任務に当たれるほどの存在なのです!!リンドブルム様にも、理解して頂きたいのですが・・・」
そんなエルルーンの不安も、ヘルムヴァーテの前に、あっさりと消えることになる。
『それは~、貴方達が~、戦闘において闘えない身体となった時でしょう~。私の回復魔法の奥義なら~、あらゆる障害を残さず~完全に元の状態に戻せますよ~』
「ほ、本当ですか!?ヘルムヴァーテ様!!」
『本当です~。それでは~、薔薇十字聖騎士団の皆さんは集まってくださ~い!』
ヘルムヴァーテの言葉に従い、騎士団の乙女達が集合する。ヘルムヴァーテは、十二人の乙女達とエルルーンに向かい、鎖を収納したままの盾砕きを掲げた。すると、鉄球の中心から、蒼い光が溢れ出し、辺りを照らし出した。
『『大いなる精霊の光よ~!我らに命の輝きをもたらしたまえ~!あらゆる傷を癒し~病を消し去りたまえ~!完全回復~!!』』
蒼の光に包まれた乙女達は、その眩しさに目を塞いだ。
閃光が収まり、辺りの視認が出来るようになった時、薔薇十字聖騎士団の団員達が、驚きを含めた喜びの声を上げた。
「動く!動きます!!今までの違和感が嘘のようです!!」
「これが女神様の、完全回復!凄い!!」
「ひきつった感も無くなったぞ!これで再び剣を振るうことが出来る!!」
喜びの声を上げる女騎士達を代表し、エルルーンがヘルムヴァーテの前に跪き深々と頭を下げた。
「ヘルムヴァーテ様。このご恩、感謝してもしきれません。いつか必ず、なんらかの形でお返しすることを誓いましょう」
エルルーンに続き、薔薇十字聖騎士団の女騎士達も、跪き頭を下げるが、ヘルムヴァーテは、ゆっくりと首を横に振り、その必要はないと告げた。
『貴方達は~、無償で~私の守る街の民達に~、尽くしてくれました~。これはそのお礼です~』
ヘルムヴァーテのその言葉に感動したブロック王も、エルルーン達に礼を尽くすことを約束した。これにはエルルーン達が逆に恐縮したのだが、ブロック王の報酬の内容を聞くと、皆、一致団結してその提案を受け入れた。その報酬とは・・・。
「いや~ここまで付いて来たかいがありましたな~、まさか、スヴェルトアールブの名物、温泉に浸かることが出来るなんて~」
ヘルムヴァーテの様な喋り方になっているのは、エルルーンである。ブリュンヒルデとその姉妹、そして、エルルーンの配下である薔薇十字聖騎士団の女騎士達は、ブレイザブリク城の大浴場に来ていた。皆、一様に浴衣姿である。この世界では、一般大衆は、素っ裸で湯に入るが、上流階級の者達は、皆このようにして、浴衣を着て湯に浸かるのが普通であった。
「ホント、天国っスね~」
「ここまでは、タングニョーストの中のシャワーだけでしたからね。足を伸ばして湯船に浸かるなどという贅沢は、出来ませんでしたしね・・・」
ゲルヒルデとシュベルトライテが、のんびりと温泉の入り心地を堪能していると、ふいにブリュンヒルデが、温泉の入り口に視線を向けた。リンドブルムとエルルーンがつられてそちらを見ると、そこには見慣れぬ女性が、浴衣を着て立っていた。
ブリュンヒルデが、その女性に声をかける。
「ようやく顔を見ることが出来たな!ヴァーテ、改めて、久方ぶりだ!!」
「お久しぶりです~。姉君~」
やっと素顔を見せたヘルムヴァーテ、女性限定ですが・・・。
ところで、失念していましたが、薔薇十字聖騎士団の読み方は、ローゼンクロイツでした。ちなみに、ワルキューレとヴァルキリーの意味は同じですが、この物語では、女神と人間で使い分けています。
では、以下次回!!