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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
天への道の章
163/211

次なる試練

 混沌の水と化した地底湖の中心で、ニーズホッグは目を覚ました。


(一体、何が・・・ッ!?そうか!私は攻撃を受けて気絶を!おのれ、小癪な人間め!八つ裂きにしても物足りぬわ!!)


 どうやら、一瞬、気を失っていたらしいと自覚したニーズホッグは、怒り狂って湖面に向かった。しかし、次の瞬間、ニーズホッグの視界は、眩い閃光に埋め尽くされた。


(今度は何だ!?)


 閃光が収まると、そこには信じられない光景があった。ニーズホッグが生み出した混沌の水が、澄んだ透明の水に変わっていたのである。


(馬鹿な!!私が文字通り、心血を注いで作り上げた混沌の水が!!このような事が出来るのは、神の血を引く者でもなければ不可能だ!!・・・まさか!!!)


 ここへ来てようやく、ニーズホッグも冷静さを取り戻した。そういえば、先程の一撃を繰り出して来た戦士は、先の戦いには存在していなかった者である。そして、彼等は、一度敗れた戦場に戻って来た。つまり、勝算があるということだ。


(一旦様子を見る必要があるな・・・)


 ニーズホッグは、身を(ひるがえ)し、地底湖の底へと消えて行った。

  

 地底湖の湖畔では、ジークフリート達が、ニーズホッグの再度の攻撃に備えていた。しかし、ニーズホッグが一向に現れないので、痺れを切らしたブリュンヒルデが、ジークルーネに探らせた所、既にニーズホッグが逃走した後であると知れた。これには逆に、ブリュンヒルデが苦虫を噛み潰したような顔を見せた。


「腐っても、将と言うだけのことはあるということか・・・まさか、撤退されるとは・・・」


 ブリュンヒルデは、ここで一気にニーズホッグを倒してしまうつもりであった。太古の毒、混沌の水を生み出すことの出来る敵、その禍根を出来ればここでt断ってしまいたかったのである。


(のが)してしまった者に、いつまでも拘ってはいられませんよ。姉上。それよりも、今はヴァーテの復活を喜びましょう」

「そうっスよ。姉さん!いや~久しぶりっスね!ヴァーテ」

「本当に、久しぶりです。ヴァーテ。ご主人様に。顔くらい見せてはどうですか?」


 ジークルーネの言葉に、ヘルムヴァーテは、一瞬考えるそぶりを見せたが、首を横に振って、顔を見せることを拒否した。


『今は~、まだその時ではありません~。とにかく、グランネイドルに戻りましょう~。そこで、ジークフリート殿には試練を受けて頂かねばなりません~』


 その言葉に、ブリュンヒルデ達、戦乙女(ワルキューレ)は息を飲んだ。


「やはりそうなのか?ヴァーテ、主殿の受ける試練とは、天空回廊のことではないのか?」


 ブリュンヒルデが、姉妹を代表して、質問するも、ヘルムヴァーテは黙して語らなかった。ジークフリートは、天空回廊というブリュンヒルデの言葉に、やや不安を感じないではなかったが、今はそれより優先すべきことがあるのも承知していた。そう、瘴気に毒されたグランネイドルの住民を浄化し、国宝、魔法の錬成釜、エルドフリームニルを修繕しなければならないということである。


「とにかく、グランネイドルに戻ろう。話はそれからだ」


 ジークフリートの言葉に一同は頷いた。そして、来た時と同じく、ジークルーネの転移魔法で、グランネイドルの街へと帰還して行った。


 まず、グランネイドルに着いた一行は、改めて街の姿を見ることとなった。なにせ、初めて入国した時は、完全武装のままで走り抜けた為、ゆっくりと街の様子を見ることが出来なかったのだ。ジークフリート達の全力疾走は、陸上の百メートルの世界記録を約半分位の時間で塗り替えることが出来るのだ。とても、そんな余裕は無かったのである。

 石造りの無骨な民家が並んでいるという潜入感は、見事に粉砕されることになる。まるで、大理石を切り出したかのような荘厳な街並みが、王城まで整然と続いている。ドゥベルグ達の職人達が、その腕を遺憾なく発揮したその成果である。その大通りを、ジークフリート達は、瘴気に中てられた住民達の状態を治しながら進んで行った。

 未だ、ヘルムヴァーテは素顔を見せてはくれません。一時撤退したニーズホッグも、次なる行動へ移るのは、少し先となります。

 そして、ブリュンヒルデの言葉に出て来た天空回廊とは、一体何なのか?

 以下次回!!

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