第五の女神
さて、ここでヘルムヴァーテについて、その特徴を記しておこうと思う。その身体をピンクシルバーの全身鎧を纏っており、顔は兜の面頬に隠れていて、見ることが出来ない。そして、その両の手には、右手に鎖の先に大きなスパイク付きの鉄球の付いた武器、所謂、モーニングスターを持ち、左手には、その体ごと覆えそうな壁盾を装備していた。ただ、兜の後頭部から、鎧の色と同じ、ピンクシルバーの髪が、まるで、装飾の一部のように、腰の辺りまで広がっていた。
だが、ジークフリート達に、その仔細について把握する時間は許されていなかった。混沌の水は、今も尚グランネイドルを地底湖に沈めんと、浸食を続けていたからだ。ジークフリートの封印解除の念が、炎の魔剣の刀身に刻まれたルーン文字に、光を灯す。それに呼応するように、女神の封石に罅が入る。それを見たブロック王が、感嘆の声を上げる。封印が解かれることが事前に分っているとしても、女神の封石はスヴェルトアールブの建国時から玉座の間に千二百年近く、その姿を変えることなく祀られていたのだ。ブロック王が驚くのも、無理からぬことであろう。しかし、次の瞬間、封石は閃光を放ち、粉々に砕け散る。砕け散った封石の欠片は、いつものようにジークフリート達に当たることなく空中に静止する。その光景に、すっかり慣れてしまったジークフリート達を他所に、初見であるブロック王とリンドブルムが驚愕し口を開け茫然と立ち尽くしていた。そんな中、封石の中にいた重装備の女神が、光の中から現れる。一歩一歩前に進む度、ズン!ズン!と足音が響く。女神がジークフリートの前まで到着すると、封石は何事も無かったように元に戻る。
『初めまして~。私の名はヘルムヴァーテと申します~。貴方の名前を是非お聞かせ下さい~。』
面頬の向こうから、くぐもった声が聞こえるが、何というか、えらくゆっくりした口調である。
「俺の名は、ジークフリート!試練はまだ受けていないが、君の封印を解いたのは、ある理由があるからなんだ」
ジークフリートは、説明しようとするが、ヘルムヴァーテは、首を横に振りながら、その必要はないと告げた。
『既に、状況は理解できております~。早くグランネイドルの危機を救ってしまいましょう~』
「では、早速行きましょうか。」
二人の会話に、割って入ったのはジークルーネであった。
「でも、どうするんだ?グランネイドルの入り口は、タングニョーストが塞いでしまっているじゃないか・・・」
「御心配には及びません。それについては解決策はすでにあります」
ジークルーネは、そう言いながら破壊の杖を振るう。すると、ジークフリート達の足元に、魔法陣が浮かび上がる。
「転移の魔法で、一気にニーズホッグの所へ跳びます。皆は戦いの準備を!」
転移魔法と聞き、ジークフリートはふと気にかかった事を、ジークルーネに尋ねた。
「転移の魔法が使えるなら、湖畔からここまで跳んで来ればよかったんじゃないのか?」
ジークフリートの質問に、ジークルーネは首を横に振って否定する。
「実は、私の転移魔法には、ある制限が仕掛けられているのです。それは、ご主人様の行ったことのある場所へしか行けないという制約です。この魔法陣はその為のもの。さあ、ご主人様!先程の湖畔を思い浮かべて下さい!さすれば、魔法は発動します!」
ジークフリートは、ジークルーネに言われるままに、湖畔の風景を思い出した。それと同時に、ジークルーネが、魔法陣を発動させる為の詠唱を始める。
「『破壊の杖よ!契約の元、我が主の望みし場所へ通じる門を開け!!明星の門!!』」
魔法陣が輝きを増し、その中にいたジークフリート達は、玉座の間から姿を消した。後には、誰もいなくなった静けさが、再び玉座の間を支配した。
ヘルムヴァーテ復活!!なんか、話し方普通に見えるね・・・。
変更するかも・・・。
とにかく、ニーズホッグに挑むジークフリート一行!勝負の行方は!?
以下次回!!