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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
天への道の章
159/211

混沌の蛇

 その影は、一言で言えば異形であった。巨人の様な上半身でありながら、四本の腕を持ち、頭と下半身は蛇そのものというまさに、怪物と呼ぶに相応しい姿である。水飛沫を上げながら近づく、その存在の正体に気付いたのは、ブロック王であった。


「まさか!あれは魔神族の将、ニーズホッグ、何故このようなグランネイドルの近くに奴が・・・」


 その名に、聞き覚えがあったのであろう。ジークルーネとブリュンヒルデは苦い顔をした。


「混沌の泉に棲むという蛇神ですか!?」

「しかも、ここは地下だ!魔導姫神(レギンレイブ)は呼べんぞ!!」


 ブリュンヒルデの説明によると、魔導姫神(レギンレイブ)は空の見える場所でしか呼べないということであった。その為、もしこのまま戦うのであれば、不利を承知で臨まねばならないということである。

 全員が、戦闘態勢に入った時、ニーズホッグが立ち止り、語りかけて来た。


『おやおや!妙な物が来たと思って見に来てみれば、これはこれは!ブロック王ではありませんか!?貴方が留守にしていたものですから、私が変ってグランネイドルを管理しておきましたよ・・・』


 いけしゃーしゃーと言い放つニーズホッグに、ブロック王は怒り心頭である。自分の武器である戦鎚(ウォーハンマー)を握りしめるが、ブロック王とニーズホッグとの間には、混沌の水があり、手も足も出すことが出来ない。


「くそっ!!あの野郎!ふざけやがって!!」

『ハハハ!いい顔だ!我等の誘いを断り、人間なぞになびくからこうなるのだ!』


 ニーズホッグはそういうと、おもむろに自らの口の中にその四本の手を突っ込んだ。その腕がゆっくりと引き抜かれると、その手の先には円月刀(シミター)が握られていた。四本の腕がそれぞれに刀を構え、その切っ先をブロック王に向ける。ブロック王も、構えるが、それはニーズホッグの罠であった。ジークフリート達のすぐ横手から、巨大な波が押し寄せて来た。注意を自分に集めておき、死角から自分の尻尾で、波を起こしたのである。ただの水なら問題は無いが、それは混沌の水である。触れるだけで、こちらの被害は甚大となる。まさにそれが、ニーズホッグの狙いであった。


『動けなくなった所で、くびり殺してやるわ!!』


 しかし、その狙いにいち早く気付いた者もいた。


「守れ!!守護の盾(スヴェル)よ!!」


 ブリュンヒルデは叫ぶと大地に盾を振り下ろす。盾が大地に激突した瞬間、巨大な魔法陣が現れ、混沌の水の波から、物理的に守って見せた。


「おおっ!?」


 ブロック王が驚嘆し、目を見開くが、ブリュンヒルデは、即座に全員へ告げた。


「撤退すべきだ!!ここで戦うには、相手が悪すぎる!!主殿!!」

「了解だ!皆、撤収!!」


 ゲルヒルデや、シュベルトライテも異存はないらしい。即座に行動に移っていた。ジークルーネは、撤退しながら、魔法を詠唱する。


『総てを凍て着かせる(まった)き氷の天蓋よ!ここに顕現せよ!凍結地獄(コキュートス)!!』


 かつて、ヨルムンガルドの動きも封じた広範囲攻撃呪文が炸裂する。しかし、ただの水と違い、混沌の水は完全には凍結していないようだ。しかも、ニーズホッグのほうも効果は薄いらしい。


極寒の大地(ニブルヘイム)で生まれたこの私に、このような魔法は効かんぞ!!』


 凍りついたその体の背面が罅割れると、ニーズホッグはそこから脱皮を始めた。だが、それこそ、ジークルーネの狙いであったようだ。


「今のうちに、行きましょう!!」


 ジークフリート達は、タングニョーストに飛び乗ると、操縦室へと登った。


「メリーダ!!グランネイドルに向け全速前進!!」

「了解!!」


 メリーダは、ジークルーネの指示に即座に反応し、アクセルを踏み込む。車輪が土煙を上げながら発進した。グランネイドルの入り口は、長い石橋の向こうに存在するが、タングニョーストがその上を走り始めた途端、音を立てて崩れ出した。これには、ブロック王が驚いた。


「馬鹿な!この石橋は、この車が乗った程度では、ビクともしない筈なのに!!」

「混沌の水のせいで、腐食が進んでいたのでしょう!しかし!!」


 ジークルーネは、チラリとメリーダに視線を向けた。メリーダも、その意図に気付き、コクリと頷く。


「こんなこともあろうかと!!」

「ポチッとなぁ!!」


 メリーダがボタンを押すと、タングニョーストの背部から噴射口が現れ火を吹いた。所謂(いわゆる)加速装置(アフターバーナー)である。

 タングニョーストはそのままグングン加速し、グランネイドルの城門へ突っ込んでいった。

 またしても、ジークルーネの悪癖によって、窮地を脱したジークフリート達。

 ようやく、ヘルムヴァーテの登場となります。

 以下次回!!

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