力の証明
「では、ニダヴェリールに入りましょう。ブロック、大門をあけていただけますか?タングニョーストで入れるはずです。大きさを、大洞穴でも動けるように設計しましたからね」
ジークルーネにそう言われたブロック王の目が泳いだ。そして、細々とした声で、呟くように言った。
「実は・・・そのぅ・・・大門はここ暫く開いていないと申しますか・・・開けないと申しますか・・・」
ジークルーネは、ブロック王の呟きを拾いあげ、答えを導きだした。
「つまり、大門も故障中であると、そういうことですか?」
ブロック王が、腰を九十度倒し、ジークルーネに頭を下げながら、大声で謝罪した。
「申し訳ありません!!日常的な交通手段としては、横に造っている通用口で事足りるので、今は、点検も碌に行っていない状態でして・・・」
そう聞くと、ジークルーネは大門の横の通用口から中へ入って行った。ブロック王も、その後に続き、更にそこにいたドゥベルグの兵達や職人達もその後を追っていった。
「なるほど、確かに、あまり点検をしていないようですね。『汚れを祓い、洗い清めよ!』」
ルーン言語の真言を唱えながら、ジークルーネが破壊の杖を一振りすると、門の裏側に造られていた大型の歯車が、長年ため込んでいた砂と煤埃の中から現れた。ジークルーネは、その歯車に魔法をかけた。後になって聞くと、それは探索の魔法で、歯車の構造上に欠陥となっている場所がないか、確認したとのことだった。
「なるほど、魔力回路に、欠損部分があるだけで、本体自体には、たいした欠陥はありませんね。これなら直ぐに直せます」
ドゥベルグ達は、ジークルーネの手際に、目を皿にして見守っていた。時々、驚愕に満ちた叫び声や、拍手喝采が起こったりしていたが、大門の表で待っていたジークフリート達は、一体、扉の向こうで何が起こっているのか、さっぱり見当がつかなかった。しかし、その答えは、鈍い音と共に開きだした大門が、全てを語っていた。その余りの重量に、大地そのものを震動させながら、ゆっくりと大門が開いていくその様子に、ジークルーネの後に続かなかった他のドゥベルグ達が騒ぎ出す。
「女神様だ!!」
「本物だぞ!!俺達も見に行こう!!」
通用口が、そのドゥベルグ達で、ごった返す。通用口は大門ほど大きくは無いが、馬車一台が楽々と通り過ぎることの出来るスペースがあるのだが、今は蟻の入れる隙もないほどに、ドゥベルグ達に溢れていた。その中からブロック王の大音声が轟いた。
「控えよ!!ジークルーネ様の行く手を遮ってはならぬ!!失礼があってはならぬぞ!!」
その声と共に、ドゥベルグ達が、左右に別れ道を作る。その中央を、ジークルーネの手を恭しくとったブロック王が進む。完全に開いた大門の前で、ジークフリート達の元まで戻ったブロック王は、改めて、ジークルーネの前に膝をついた。
「貴方様は、真に、英知の女神でありました。これから先、このニダヴェリールにおいて、貴方様の邪魔だてをする者は居ないと約束しましょう!」
そう言って、再び頭を下げるブロック王。そして、気が付けば、それは彼だけに留まらず、そこにいた全てのドゥベルグ達が王に習い、膝をつき頭を下げていた。ジークルーネが、一歩前へ出て、ドゥベルグ達に告げる。
「今、このニダヴェリールを多くの厄災が襲っています。しかし、恐れることはありません!私達がここへ来た以上、厄災は間もなく消え去ります!英知の女神、ジークルーネが約束しましょう!」
その宣言に、ドゥベルグ達の表情が明るくなり、一斉に歓喜の声がトリルハイムに響き渡った。
昨日の夜、帰りました。更新遅れてすみません。
ようやく、一行はスベルトアールブに入ります。
さて、地下王国スヴェルトアールブの王都、グランネイドルまであと少しです。以下次回!!