更なる厄災
ブロック王は、目の前に立つゲルヒルデが、かつてヴィーグリーズの闘技場で見た封石の女神であると、確信した。リンドブルムにさえ知らされていなかった自分と、ガルガンチュア王との試合、あれを知っているだけでも目の前の存在が、封石の女神だと信じざるを得ないのに、更に女神の証しである神鎧甲まで纏って見せたのだ。少なくとも、このニダヴェリールにおいて、魔導装甲と神鎧甲を見分けることが出来ない職人などいないだろう。その王であるブロックであるなら尚更である。
「な、何故、封石の女神様がここに・・・?」
「ちなみに、ブロックの横に立ってドヤ顔しているのが、あたしの姉さんで、英知の女神でもあるジークルーネっスよ」
えっ!?とブロック王がジークルーネを振り返る。ブロック王は、ジークルーネのその佇まいに、女神としての威光でも垣間見たのか、突如、片膝をつき頭を垂れた。
「貴方様に、お願いの儀がございます!どうか、私と共に、我が都グランネイドルに赴き、我が国の国宝、エルドフリームニルの修繕に力を貸して頂けないでしょうか?」
ブロック王の、必死の嘆願に、ジークルーネは、ふと、ジークフリートに視線を向けると、こう答えた。
「ブロック、私達は今、ある目的の為に、貴方の治める王国にやって来ました。その目的とは、貴方の国に祀られている封石の女神、ヘルムヴァーテを封印から解くことなのです」
「なんと!?」
これには、ブロック王も驚いた。女神が封印から解かれるということは、その加護が失われてしまうのではないかと、不安になったからである。しかし、その不安はすぐに解消された。リンドブルムが、ヴィーグリーズにある女神の輝石について語ったからである。
「むしろ、今の方が、威厳に溢れているような気さえしています。実際のご本人がこんな感じの御方ですからね・・・」
「どーゆう意味っスか?リンちゃん!」
まるで、友人か姉妹のように接している二人を見て、ブロック王は納得した。
「私からも、お願いします!私達の目的は、貴方の国から、繁栄を奪う為ではなく、共に未来を築く為の試練に打ち勝つためなのです」
ジークフリートが、ブロック王の目を見ながら、これまで自分が辿って来た試練は、この世の滅亡を防ぐ為と、魔神族の侵攻を防ぐために必要なことだと語った。ブロック王が難しい顔をして考え込んでいると、そこへ、操縦室にいたメリーダという、薔薇十字騎士団の女騎士が入って来た。
「あのー、お取り込み中の所、申し訳ありません。外の方で、何かあったみたいで、ブロック王に取り次いでもらいたいと、ドゥベルグの戦士の方が叫んでいるのですが・・・」
メリーダからの報告により、いったん外へでることになったブロック王。そして、ジークフリート達もその後に続き、外に出て行った。タングニョーストの外には、真っ青な顔のドゥベルグの戦士が、ブロック王を待っていた。ブロック王の元へと駆け付けると、緊張した様子で、報告を始めた。
「王よ!一大事にございます!我等の命とも言うべき地底湖が、何者かに毒を入れられ、飲むことはおろか、生活用水としても使用が不可能となってしまいました!」
その言葉に、周りにいたドゥベルグ達に、絶望的な雰囲気が漂い出した。ブロック王の悲痛な顔も、それに拍車をかけている。
しかし、その空気を吹き飛ばすかのように、ブリュンヒルデがブロック王の背中を張り飛ばした。
「心配するな!原因が毒と言うなら、うってつけの者がいるではないか!」
ブロック王が、背中の痛みに顔を歪めながら、ブリュンヒルデに聞いた。
「そ、それは一体誰なのですか?」
ブリュンヒルデは、頷きながらその質問に答えた。
「勿論!ヘルムヴァーテに決っているだろう!慈愛の女神であるあの娘ならば、いかな毒も浄化してしまう浄化魔法の真髄を極めているからだ!」
ヘルムヴァーテさんは回復系のエキスパートのようです。
後衛ですね分かります!
さて、ヘルムヴァーテ復活となるのでしょうか?
以下次回!!
というところで、また出張です(泣)次の更新は金曜日くらいになるかな?




