女神の輝石
今日も闘技場では、リンドブルムとゲルヒルデが激しく火花を散らしていた。
彼女らの周りには、この闘技場の闘士達が集まり、真剣な表情で見つめていた。
槍という長物を扱っているにも関わらず、二人の動きは全くそれを感じさせない。
まるで、一つの舞踏を舞っているような二人の動きは、しかし時に恐るべき一撃を放ちあい、見ている者達にまで、その恐怖が伝わるようであった。
リンドブルムは雷鳴の斧槍の能力を十全に使いこなせるようになっている。
しかし、ゲルヒルデの勇気の槍に雷撃は通じない。正確には、ゲルヒルデの展開した勇者の力の力が、雷の属性攻撃を無効化しているのだ。
避雷針という秘技らしいが、これを使える者は、この場にゲルヒルデしかいない。
自分と互角か、それ以上の相手に恵まれなかったリンドブルムにとって、ゲルヒルデは正に、うってつけの教師であった。
二人は光の翼を展開し、空中戦に移行した。果てることのない二人の戦いに、観戦者達は、溜息を洩らすばかりである。
「凄まじいな。リンドのやつが、この短期間にあそこまで実力を上げるとは・・・」
王の観覧席から、娘の戦いぶりを見たガルガンチュア王は、感慨深くそう呟いた。
公務が終り、ジークフリートとブリュンヒルデを連れ、最近評判になっているリンドブルムの訓練を見に来たのである。
「元々、母親から受け継いだ潜在能力が開花しただけであろう。それに、ああ見えてゲルヒルデの奴は手加減を心得ているからな」
ブリュンヒルデの言葉に、ガルガンチュア王は、軽く戦慄を覚えた。
「あれで、まだ手加減しているのか。凄いな・・・。しかし、ジークフリートが旅立つ時は、ゲルヒルデ様も共に行ってしまうとなればヴィーグリーズの加護は失われてしまうのだろうな・・・」
少し残念そうに言うガルガンチュア王であったが、ブリュンヒルデの一言がその空気を変える。
「加護は失われたりはしない。見るがいいガルガンチュアよ!」
ブリュンヒルデの指し示した方を、ジークフリートとガルガンチュア王が見ると、封石はゲルヒルデの収まっていた部分がそのまま空洞となり、まるで今も透明となったゲルヒルデがそこにいるようである。そして、淡い光を放ち続ける封石は、その力を失っていないようであった。
「どういうことだ。ヒルデ?」
これまで、女神達の封印を解いた後は、封石のことなど注視していなかったジークフリートは、初めてその事に気が付いた。
「この封石は、二千年の永きに渡り我等の神気を受け続けていたのだ。この先、半永久的にその力が無くなることはない」
「半永久的と言うと?」
ガルガンチュア王は、ふと疑問を口にした。
「ヴィーグリーズの民達が、封石の加護にそぐわぬ者となれば、その効力は打ち消されるということだ。この女神の封石、いや女神の輝石と言った方が正しいか・・・」
「女神の輝石か!うむ、了解した。民達の不安もこれで解消できるというものだ。礼を言わせて頂きたい、ブリュンヒルデ様」
ガルガンチュア王の言いように、ブリュンヒルデは苦笑した。
「無理に、敬称を付けることはない。それに、私も堅苦しいのは苦手でな」
「そう言ってもらえると助かる。いや!気が合うな!ブリュンヒルデよ」
そう言って笑うガルガンチュア王とブリュンヒルデ、そして、ジークフリートは訓練が終り、地上に降り立ったリンドブルムと、ゲルヒルデの元へ進んで行った。
ジークフリート達は、次の目的地に向け、行動を開始します。
次なる目的地、スヴェルトアールブで待ち受ける試練とは?
以下次回!!
と言いたいところですが、明日は出張です。残念!!
火曜日以降の更新となります。スミマセン!