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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
始まりの章
14/211

戦い

 シグルドは腰の鞘から、剣を抜き放った。


「感謝いたします!王よ!!」


 そう、礼を述べながら、魔導装甲(マギアームス)の全機能を解き放った。

 深紅の刻印が、シグルドの全身を覆い閃光を放つ。


「破アアアアアアアアアアアア!!!!」


 その闘気は、崩れかけた大聖堂をビリビリと震わせた。


『『おお!?』』


 死霊騎士(スケルトンナイト)達が、驚きを(あらわ)にする声をあげた。

 しかし、シグルドの声をかき消すような、ジグムント王の声が響き渡った。


『カアアアアアアアアアアアア!!!!』


 ジグムント王もまた、その鎧の力を発現させた。

 漆黒の魔導装甲(マギアームス)に、蒼い刻印が炎のように浮かび上がる。

 その鬼気が、鬼火を呼び、まるで全身が蒼い炎に包まれたようである。

 シグルドは戦慄を覚えるも、その顔には笑みがこぼれていた。

 やはり、王も魔導装甲(マギアームス)を問題無く使用出来るようだ。

 強者との戦いを望む彼にとって、これ以上の敵は無い、と言えるほどの相手である。


我身(わがみ)はオーディン神の加護を受けしエインヘリヤルとして存在している!!その力は生前となんら変わることは無い!!しかも疲労も痛みも感じぬ!!お前にこの我が倒せるか!?』

「倒せるかどうかは問題じゃない!!今の俺にとっては、戦うことにこそ意味がある!!!」

『ならば行くぞ!!』

「応!!!」


 ズン!!と二人が同時に石畳を陥没させるほど踏み込み、次の瞬間互いに床を蹴った。


 ガァッ!!


 二人の剣同士が、ぶつかり合い火花を散らす。しかし、地力において(まさ)ったのは剣王ジグムントであった。


『オオオオオオオオアア!!』


 ジグムント王の剣が振り抜かれると、シグルドは弾き飛ばされ壁に激突した。


 ドゴオオオオン!!

 

 その音が大聖堂に木霊し、崩落が起きた。


「グハァ!!!」


 シグルドは、瓦礫に埋もれ、倒れ伏した。

 しかし、ジグムント王は追撃を行わず、その場に立ち、シグルドに語りかけた。


『この程度で終わりか?』


 シグルドは、朦朧とする意識の中で、ジグムント王の声を聞いた。やけに懐かしく、優しい声音(こわね)だった。

 それと同時に、過去の記憶が蘇った。それは、かつて愛した女性と親友の声であった。


《シグルド、ごめんなさい・・・でも、どうかあなたも私たちの結婚を祝福して下さい。》

《シグルド、俺は――――を愛してしまった。許してくれ・・・彼女は俺が必ず幸せにしてみせる。だから・・・》


 ミズガルズの貴族派の者達や、聖教会の教皇の後押しがあったとはいえ、最後は自分を裏切って結婚した。その二人への怒りが、シグルドの意識を繋いでいた。


「ま・・・だだ・・・!!」


 身体の痛みなど、どこかへ消し飛んでしまった。

 そして、シグルドは、瓦礫の破片の中から、再び立ち上がった。


(俺には、もう(コレ)しかない!自分自身で培ったただ一つのもの!それが、(コレ)だ!!)


 その想いは、剣を持つ指に力を与え、柄が握りつぶさんばかりに、ギシリと音をたてた。

 少し過去が、明らかになってきました。

 

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