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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
真戦の始まりの章
138/211

大封印の間の戦い

 巨大なドラゴンとなったファーブニルが、巨大な黒炎を吐き、ガルガンチュア王が黒炎に飲み込まれる。

 エルルーンは、息を飲むが、その瞬間、ブリュンヒルデの凛とした声が響いた。


「守れ!!守護の盾(スヴェル)よ!!」


 守護の盾(スヴェル)より出現した光り輝く魔法陣が、黒炎の奔流を押し返す。


「流石は、ブリュンヒルデ様!シュベルトライテ様の姉君というだけのことはある!!」


 エルルーンは安心すると、闘技場(コロッセオ)から出ることにした。

 もし、この襲撃が、ヴェーグリーズに存在する、大封印を狙ったものならば、そこには必ず夜の女神、ヘルが現れるはずである。


「今度は、逃がさん!!」


 その決意が、エルルーンを進ませていた。

 途中、部下である薔薇十字騎士団の団員である十二人の乙女達と合流し、一路、ビルスキルニル大神殿へと急いだ。

 大封印は、トールの巨神像の真下に祀られているはず。

 フォールクヴァングの教皇エイルから、事前に教えられた知識によって、エルルーン達は、神像の元に辿り着いた。

 しかし、すでに封印されていたはずの大扉は開放され、その傍には、大封印を守る為戦ったのであろう神官達が絶命していた。


「なんということだ!!」


 その中の神官の一人はまだ息があった。


「た、頼む!!」


 息も絶え絶えに、エルルーン達に手を伸ばす神官、エルルーンはその手を取ると抱き起した。


「大丈夫か!!」

「私のことはいい・・・大封印を守ってくれ!!た・・のむ!!」


 そう言うと、神官はトールの神像に手を伸ばし、最後にこう言った。


「身元に参り・・・ます。トールさ・・・」


 力なく、床に落ちたその手を胸の前で組ませると、エルルーンと薔薇十字騎士団の団員達は、胸の前で聖印を組んで、僅かな黙祷を捧げると、地下に繋がる階段に飛び込んで行った。


「必ず守ってみせる!!」


 そう、叫んだエルルーン同様、騎士団の乙女たちもまた戦意に燃えていた。

 そして、その目に、大結界の発する赤い光が見えて来た。


「総員、油断するな!!」


 その結界の中心に、エルルーンの予想道理、夜の女神ヘルが立っていた。


「おや?」


 ヘルの方は、予想外の来客に、不思議そうに振り向いたが、エルルーンの顔に見覚えがあったのだろう。


「なるほど、フォールクヴァングの預言者(オラクル)の差し金か・・・無駄なことをする・・・」


 エルルーンは、油断なく騎士団員達に命令を下す。


「相手は幻術を使う!全員十字聖弓(クロスボウ)展開!!射線上に大封印を入れろ!面の攻撃にて確実に手傷を負わせるのだ!!」


 エルルーンを含めた全員が、その手に十字聖弓(クロスボウ)を展開させる。この世界の飛び道具は矢玉を必要とせず、魔力を光の矢と化し、射出するのだ。

 最も、大封印には、傷一つ付けられないのだが、それを知っているエルルーンに遠慮は一切なかった。


「全員斉射!!()ーーーーーーーーー!!」


 十字騎士団の放った光の矢が、ヘルを襲う。

 しかし、突如、銀色の閃光が横手から出現し、その光矢(こうし)を全て弾き飛ばした。

 それは翼であった。

 金属の冷やかさを(たた)えた鋼の翼、それが左右の闇の中から現れ、エルルーン達の攻撃を防いだのである。

 

「お(ひい)様、御身に何かあっては一大事、(たわむ)れは程々になされませ」


 その言葉と共に、白銀の鎧に身を(まと)った男の騎士が現れた。

 その顔は、(からす)を模した鉄仮面に包まれていて、表情は全く見えない。


「そう言わないで、フギン」

「この者達の相手は、我等が致します。お(ひい)様は本懐を」


 次に現れたのは、女の騎士である。この騎士の顔も、(からす)の鉄仮面で包まれている。

 その鎧が、女性の身体に合わせて造られていなければ、女と判断できたか判らないハスキーな声であった。


「手加減はしなさいよ。ムニン」


 そう言うと、ヘルは神滅の槍(ミストルティン)を出現させた。


「させるかーーーー!!」


 そうはさせじと、エルルーンは剣を抜いて突貫した。

 薔薇十字騎士団の団員達もそれに続いた。

 新たな敵の出現でした。

 フギン、ムニンは本来、オーディンに仕えるワタリガラスのことですが、この世界では、ヘルの部下として存在します。

 フェンリルの部下、フレキとゲリもそうですね。

 皆さんは分かったでしょうけどね(笑)

 以下次回!!

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