婚約
ヴィーグリーズの民達が歓喜の声を上げる中、ガルガンチュアはジークフリートの手を借り、兵達の帰還を労う為、声を張り上げる。
「よくぞ戻った!!勇者達よ!!我が娘リンドブルム!!そして、女神の方々!!」
その声は、喧噪の中でも良く通った。
「ガルガンチュア王だ!!」
「我等が王!ガルガンチュアは健在だぞーーー!!」
「ガルガンチュア王バンザーイ!!」
市民達は、ファーブニルの襲撃から無事に生還したガルガンチュアの姿に再び歓声を上げる。
ガルガンチュアは、その声に応えつつ、ブリュンヒルデ達の元へ進んだ。
ブリュンヒルデ達の元へ辿り着いたガルガンチュアは、ジークフリートに礼を言い自ら立つと、痛む身体に鞭打って、再び市民達に語りかけた。
「ヴェーグリーズの民達よ。この未曾有の危機に、我等は守護女神の加護を受け、無事に切り抜けることが出来た。まずはそれを喜ぼう。そして、この場を借りて一つ、皆に報告することがある。我、ガルガンチュア王は、大闘技祭優勝者ジークフリートと、王女リンドブルムとの婚約を認め、第一王位継承者に認定する!」
ガルガンチュア王は、ジークフリートを指し示しながら、爆弾発言をかました。
その言葉に、一瞬、静まり返る市民達、だがその意味が解ると、再び歓声が爆発した。
「さあ!!今から後夜祭の始まりと行こうじゃねえか!!城も開放し、酒を振舞うぞ!!みんな俺についてこい!!」
ガルガンチュアはそう言うと、人々を引き連れ、スルーズヴァンガル城へ向け歩き出した。
ジークフリートは、その人の波に押されるようにして連行されて行った。
突如として、ガルガンチュアに王位の継承者に認定され、意識が飛んでいたのだ。
最も、それはジークフリートだけではなく、リンドブルムも同じであった。
ガルガンチュアは、公式に、ジークフリートを、リンドブルムの婚約者として発表したのだ。
目を丸くしてガルガンチュアの去って行った方向を見つめるリンドブルムの肩を、ブリュンヒルデが軽く叩いて祝福した。
「おめでとう!リンドブルム!これで、そなたも我等姉妹の一員となった訳だ!これからもよろしく頼むぞ!!」
「ええっ!?」
「さあっ!我等も城へ行こうではないか!!」
「ちょっと!オイ!引っ張るな!!」
手を引かれながら、リンドブルムは、ヴィーグリーズの空を城へ向け飛んだ。
口では嫌がりつつも、その顔には笑顔が浮かんでいた。
スルーズヴァンガル城の中は、兵士や市民で溢れていた。
玉座の間では、酒蔵の樽が所狭しと並べられ、訪れた者達に振舞われた。
ジークフリートは、ガルガンチュアの隣に設けられた席に座らされ、王位の継承者として、人々に紹介されていた。
ジークフリートが驚いたのは、人々が既にジークフリートを受け入れていることであった。
「不思議かい?婿殿。」
ジークフリートの様子に、ガルガンチュアは笑みを含めた声で尋ねた。
「正直、驚いている。俺には魔神族の血が流れているのは、周知の事実のはずなのに、皆、恐れるどころか受け入れ、認めている。ミズガルズでは有り得ないことだ。」
「ヴィーグリーズの民は、おおらかだからな、王として必要なのは、揺ぎ無い力と、正しい人間性だけなのさ」
ガルガンチュアの顔には、自らの民に対する、信頼と誇りが見えた。
また、挨拶に来た市民達や、街の有力者達も、ガルガンチュアに対する無上の信頼を寄せているのが、見て取れた。
(これは、王の器量の差だな。ガルガンチュアの人柄が、人々にも影響しているんだ。ガルガンチュアが認めたからこそ、人々は俺を受け入れることが出来たんだ。まだまだ差は大きいな)
ジークフリートは、いずれヴァルムンクを復興させねばならぬ身である。
王として立つには、学ぶべき所が多く、ガルガンチュアとのあまりの差に、愕然としたが、故国の復興の為には、いかなる苦労も厭わないつもりであった。
「勉強させてもらいますよ。ガルガンチュア王」
そう言ったジークフリートに、ガルガンチュアは満足そうに頷いた。
ようやく帰ってこれました。
そして、晴れて公式に、ジークフリートとリンドブルムは婚約を許されました。
ところで、大封印の話はどうなったのでしょう?
以下次回!