養父の正体
ついに現れた、剣王ジグムント。その体から発する鬼気は、大気を歪ませ、まるで陽炎のようである。
シグルドは、その鬼気を肌で感じて戦慄していた。
(化け物級だな・・・ここまでの力の波動は、ダインヘイムにおけるギンヌンガカプ要塞の防衛戦で、雷帝ガルガンチュアの戦いを見て以来だ・・・)
自然と、冷汗が頬を伝った。
ジグムントは、騎士たちの隊列の間を、悠然と歩いて来る。
その正に、王者の風格を湛えた在り様は、文献に語られていたような、人類の裏切り者としてのイメージは、全く感じさせなかった。
司教ミーメの前まで来ると、そこで初めてシグルドに声を掛けてきた。
『余が、剣王ジグムントである。余に戦いを挑みたいと言うのはそなたか?』
落ち着いた深みのある声である。
シグルドは、唾を飲み込みその声に答えた。
「そうだ!俺は剣士シグルド!貴方に挑戦したく思いやって来た者だ。この挑戦、受けてくれますか?」
声が震えそうになるのを、気力を振り絞りながら、シグルドは挑戦の意思を伝えた。
その様子に、剣王ジグムントは、肩を揺らしながら答えた。どうやら、少し笑ったらしい。
『挑まれて断るほど無粋ではないさ、しかし。』
ジグムントは、腰に差していた剣を抜き放った。
『命がけだぞ?』
その切っ先をシグルドに向け、殺気を叩きつけてきた。
身も凍るような殺気を受け、シグルドはブルリと震えた。
しかし、それは恐怖ではなかった。
いわゆる武者震いというものである。
「承知の上です。王よ。あなたと戦えるのなら、本望というもの。」
そう言って、シグルドはニヤリと笑った。
『ならば、是非もない。』
剣王ジグムントは、そこで司教ミーメを見て手短に聞いた。
『試したか?』
ミーメは、困惑した様子で答えた。
『はい・・・しかしながら・・・。』
いまだ、自然石に刺さったままの宝剣グラムを目線で示すことでその問いに答えた。
『そうか・・・お前の養父はレギンといったそうだな。どのような人物であったか聞かせてくれまいか?』
「田舎の鍛冶屋のオヤジですよ。ただ、剣の使い方や騎士の作法なども養父から教えられたものですが・・・。」
『ふふ・・・やはりな。・・・そなたの養父は、我が近衛の一人であった。剣においては、我に迫るほどの使い手であったよ。』
シグルドは、養父の正体を知り驚いた。
『そうであるなら、手加減は無用だな!ヴィーザルまでも倒したのだ、実力は間違いなかろう!』
シグルドは、正門を守っていた死霊騎士を思い出した。
『ヴィーザルは、この国では、一の槍使いであった。それを倒し我が前に立つと言うなら、資格は十分!!』
剣王ジグムントは、悠然と剣を構えた。
『さあ!存分にかかってくるがよい!!!』
戦闘シーン突入です。ちなみにニーベルングの指輪でのレギンは、悪党です。