神技 対 神技
かつて、その一撃によって、ギンヌンガカプの要塞を襲ったヨートゥンヘイムの霜の巨人二百体を、瞬時に撃滅してのけた神技、それが|豪砲雷落《ライトニングスマッシャ―》である。
対して、ジークフリートも神技で対抗する。
目には目を、歯には歯を、神技には神技を、それがジークフリートの作戦である。
作戦と呼べるかどうかは謎であるが、それが唯一の突破口であることに間違いは無い。
黒獅子の鎧が金色に染まり、ジークフリートの闘気が、極大と成る。
それに呼応して、炎の魔剣が真紅に輝く。
ガルガンチュアの渾身の一撃が決るその刹那、打ち下ろす雷神の鎚に狙いを定め、ジークフリートの神技が炸裂する。
ヴィーの魔力の全てを消費し、満月の周期に合わせ一度しか使えぬ神技、その名は。
「煉獄天衝!!!!」
振るった刀身から、流星の吐息の魔力と、ジークフリートの魔神の力が一体となった神技が発動する。
閃光が奔った。
次の瞬間、闘技場を激震が襲った。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
爆音が鳴り響き、結界が揺さぶられる。
「クウッ!!?」
結界を支えていたジークルーネが、苦悶の声を洩らす。
衝撃波だけでも、観客の全てを消し飛ばしてもおかしくない威力であった。
と同時に、ブラギを除く宮廷魔術師達全員が気を失う。
結界が効力を失い、掻き消える。
と、爆煙の中から二つの光が飛び出し壁に激突した。
炎の魔剣と雷神の鎚である。
二つの武器は、対角線上に壁に激突し、オブジェと化してしまった。
人々は、ジークフリートとガルガンチュアの姿を、砂煙の向こうに探した。
「父上!!ジークフリート!!」
身を乗り出して二人を探すリンドブルム、しかし、ブリュンヒルデは落ち着いて声をかけた。
「落ち着けリンドブルム!」
「これが落ち着いていられるか!お前はジークフリートが心配ではないのか!」
そう問われたブリュンヒルデは、シュベルトライテに視線を移す。
シュベルトライテは、その意味を察し目を閉じた。
その手がスッと上がり、武舞台の一角を示す。
果たして、その指し示された先に、二人は居た。
ジークフリートは、全身がボロボロである。
未だ微かに黒獅子の鎧の治癒効果があるとはいえ、すでに魔人化は解かれ、ズタズタにされた鎧は、見るからにその受けたダメージが尋常のものではないと物語っていた。
一方、ガルガンチュアの方も、酷い有様である。
上半身を覆っていた力の帯が跡形もない。
魔導核である腕輪は無事であるから、完全に破壊された訳ではない。
むしろ、あの爆発の中心で五体満足でいることが、神宝具の凄さを窺わせるというものである。
二人とも、正に満身創痍の状態である。
だが、決着は付いていない。
震える体を支え、なんとか前を向いたガルガンチュアが見たものは、ジークフリートが放った拳であった。
顔面に撃ち込まれる拳を感じながら、ガルガンチュアも無意識に拳を突き出していた。
ジークフリートの腹に突き刺さるガルガンチュアの拳、戦いはまだ終っていなかった。
観客達は、ようやく二人の存在に気付いたようだ。
所々で、ザワつく声が聞こえ始めた。
その中、一人だけその場を離れた者がいた。
フェニヤである。
フェニヤは、懐から念話水晶を取り出し、告げた。
「今がその時です!ファーブニル様!」
『ご苦労だったフェニヤ。直ぐに離脱しろ、そこは地獄と化す!』
彼女を気遣うその言葉に首を振り、フェニヤは答える。
「いえ!お供いたします!たとえ地獄であろうとも!」
そう言うと、フェニヤは念話水晶を切った。
そして、闘技場に振り向くと、クスリと笑った。
「こうも上手くいくとは、あの半魔人には感謝しなければな。フフフ・・・」
更なる戦いが、始まろうとしていた。
二人の闘いはまだ続きます。
そして、新たな脅威がヴィーグリーズを襲います。
以下次回!!
ところで、神技の名前を当て字に変えました。
やはり無理があったので・・・。(汗)