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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
大闘技祭の章 急
124/211

雷神の一撃

 裏舞台でブラギ達と、ジークルーネによる共同作業によって、観客達の安全が確保されたころ、表舞台の武舞台(ステージ)の上での闘いは、苛烈を極めていた。

 ジークフリートとガルガンチュアの激突する所には、必ず爆発が起こるようになっていた。

 武舞台(ステージ)に使われている石畳が、その衝撃で粉砕されているのだ。

 当事者である二人も無事とは言い難い。

 ガルガンチュアは肩で息をするようになっていたし、ジークフリートにいたっては、その反動で手の毛細血管が破裂し、両手が血塗(ちまみ)れとなっていた。

 玉の汗を額に滲ませながら、ガルガンチュアはこの若き挑戦者に驚嘆していた。

 かつて、これほどまでに自分の攻撃について来れた者などいなかったからだ。


「流石は、ジグムントの息子なだけはある!!」


 かつての盟友を彷彿とさせるその姿に、ガルガンチュアはその胸中に、果たせなかった強敵(とも)との決着を見ていた。

 一方、ジークフリートが、ガルガンチュアほどの格上の相手に追従できているのは、黒獅子の鎧の力による所が大きかった。

 その装着者に対する追加技能は、全方位治癒オールマイティーヒーリングである。

 成長する鎧とは聞いていたが、これまでの自動修復(オートリペア)機能に加え、これまでの闘いや特訓によって引き出されたこの能力は、鎧に触れた命あるものに、治癒力を分け与える力である。

 そして、その力は、炎の魔剣(グラム)となったヴィーにも、影響を及ぼしていた。

 どうも、黒獅子の鎧からすれば、魔導生命体と成ったヴィーも、装着者の範疇に入るらしい。

 雷神の鎚(ニョルニル)の直撃に耐えられるのも、刃こぼれした瞬間に修復されているからである。

 とはいえ、ジークフリートがジワジワと押されていることに変わりはなかった。


(まず)いぞご主人(マスター)!!このままでは早晩、押し切られてしまう!!』

「なかなか馬脚を現してはくれないが、雷帝には弱点があるんだ!」

『あの化け物に弱点などあるのか?』

「ああ!とっておきのがな!!」


 会話をする二人に、ガルガンチュアの雷神の鎚(ニョルニル)が撃ち込まれる。


「随分と余裕じゃねえか!!ジークフリートよ!!」


 ズドンという音がして、その一撃を受け止めたジークフリートの足下が爆砕する。


「余裕あるように見えるかね!このオッサンは!!」

「そんな口が聞けるのは、お前だけだぜ!!ジークフリート!!いや!婿殿!!俺の娘の見立ては間違っていなかったってことだ!!」


 鍔迫り合いに興じながら、二人は攻撃の手を緩めない。

 ジークフリートは、賭けに出ることに決めた。


「悪いが、それはリンドブルムの勘違いだ!!俺の目的は初めから、女神の封石唯一つ!!それ以外は興味がない!!」


 その一言を聞いたガルガンチュアの顔が一変した。

 顔が、真っ赤に染まり、その形相は鬼か悪魔かといった風情(ふぜい)である。


「なんだと!!つまり貴様はリンドの心を(もてあそ)んだのか!!」


 その怒りで大気が震える。

 ガルガンチュアは、ジークフリートから大きく距離を取ると、闘気を更に爆発させた。

 限界を越えるその闘気に、ジークフリートは静かに呟く。


臨界突破(オーバーブースト)か・・・来るぞヴィー!!」

『話に聞いた、ガルガンチュアの神技(ゴッドアーツ)か!!』


 それは、ガルガンチュアをヴィーグリーズ最強たらしめる一撃である。


「こうなったら、嫌でもお前にはリンドを貰ってもらう!!生き残れたらの話だがな!!」


 闘いの激しさとは懸け離れた、親バカ全開のセリフを吐きながら、ガルガンチュアが雷神の鎚(ニョルニル)を天へと(かか)げる。

 幾重にも重なった(いかずち)雷神の鎚(ニョルニル)に直撃し、閃光となって留まる。

 その威力を一度に開放するその技の名は。


豪放雷落ライトニングスマッシャー!!!!」

 ガルガンチュアさん親バカ炸裂!!

 しかし、その威力は核爆発に匹敵します!!

 親バカここに極まれり!!


 神技の名前を当て字に変えました!

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