激突の最中に
リンドブルムが勝負の開始を宣言した瞬間、闘技場が揺れた。
それは、二人の闘気のぶつかり合った時に発生した摩擦によって起こった衝撃であった。
「ヌオッ!!」|
その呻きは、ブラギの口から発されたものであった。
「爺!?」
「大丈夫ですじゃ、姫様!・・・皆、心して結界に集中せよ!」
『『『『承知致しました!』』』』
宮廷魔術師の弟子達に活を入れつつ、結界へ魔力を集中し始めたブラギの姿に、リンドブルムはこの闘いが既に、尋常ならざるものになっていると感じた。
そして、その予感は的中する。
突如、天空を引き裂き、雷の奔流が降り注いだ。
と同時に、ドーム状の炎が放射状に広がり、雷を塞き止めた。
その嵐の中を金色の光が奔る。
先制攻撃を放ったガルガンチュアが、ジークフリートへ畳み掛けるように雷神の鎚を振り下ろす。
ジークフリートも、ガルガンチュア目掛けて、疾走する。
そして、炎の魔剣を両手で掴み、フルスイングした。
ゴオオオオオオオオオオオン!!!
それは、巨大な釣鐘が鳴ったような轟音。
雷神の鎚と炎の魔剣が激突した音だ。
「ヌウウウウウウ!!」
「オオオオオオ!!」
互いに、反動で大きく態勢を崩すが、すぐに立て直し、再び轟音が炸裂する。
炎と雷が嵐と成り、武舞台を揺るがす。
まるで、伝説にある始原の巨人同士の闘いが繰り広げられたようであった。
「グウウウウウ!?」
その余波だけで、ブラギを元とする宮廷魔術師達は、結界の維持が困難に陥っていた。
『お師匠様!このままでは、結界を維持できません!!』
『観客を避難させた方がよろしいのでは!?』
それぞれ、結界の維持の為、闘技場十二の方向に配置されているブラギの弟子達から、結界の機能を使った、念話が送られてきた。
その声には、切羽詰まった者の持つ焦りがにじみ出ていた。
「なにを情けないことを言っておる!国家の威信がこの大闘技祭にかかっておる!各自、全力で結界を維持せい!!」
そう言ったものの、ブラギ自身もまた、窮地に陥ろうとしていた。
(致し方ない!二人の魔力の激突が、これほどのものとは思わなんだ!観客の避難も已む無しか!?)
魔力によって結界を操作する水晶球に、懸命に魔力を注ぎこむが、圧倒的ともいえるジークフリートと、ガルガンチュアの持つ神宝具の魔力に、常ならば、蒼い光をたたえる結界が、時折赤い光に変じ、ブラギ達の結界は、限界が近づいていることを現していた。
そんな彼の肩をたたいた者がいた。
「手伝いましょう」
その声に、ブラギが振り返ると、そこには、ブリュンヒルデの関係者ということで、王の観覧席に招かれていたジークルーネの姿があった。
「お前さんは一体!?」
驚くブラギを他所に、ジークルーネが破壊の杖を振るう。
煌くような魔力光が降り注ぎ、結界操作用の水晶球に吸い込まれていく。
すると、今まで不安定に揺らいでいた結界が、元通りの青い光となり落ち着いた。
『お師匠様、コレは一体!?』
『その者は何者ですか?』
「落ち着かんか!とにかく、今はこのまま結界の維持に努めよ!!」
そう言いながらも、ブラギは突如現れた桁外れの魔術師に驚きを隠しきれなかった。
しかし、痩せても枯れても、自分はヴィーグリーズの宮廷魔術師筆頭である。
水晶球に視線を戻し。
「感謝する!!」
と、落ち着いた声で礼を言った。
「礼には及びません。この闘いの決着には、姉様の運命も懸かっていますからね。」
そう言って微笑むジークルーネの顔には、いまだ余裕がありありと浮かんでいた。
何故か、脇役達にスポットが・・・。
ジークフリートと、ガルガンチュアの闘いの激しさに、ジークルーネさんが参戦!!(別の意味で)
以下次回!!




