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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
始まりの章
12/211

死者の王

 改めてシグルドは、宝剣グラムを観察してみた。鈍い灰色の刀身は錆一つ浮いていない。その握りやガードの部分にも、(ほこり)一つ付着していなかった。おそらく、死霊騎士(スケルトンナイト)達が手入れをしているからであろう。そんな、国宝ともいうべき剣を司教ミーメはこともなげに抜いてみろと言うのである。


(俺がこの剣を抜ける訳無いだろ!)


 と、シグルドは思ったが、試してみたいという気持ちも確かにあった。こういうシチュエーションに、滅法、興味があるのは、男として生まれた以上、仕方の無いことであった。


「よし!」


 そう気合いを入れて、剣の握りを両の手で掴み、息を大きく吸い込んだ。


「ふん!!!」


 シグルドは渾身の力を籠めたが、グラムはビクともしなかった。

 そこで更に、魔導装甲(マギアームス)の力を解放してみた。

 全身に刻まれた刻印が、赤い光を放ち、シグルドの両の足が聖堂の石畳にひびを入れるが、それでも剣は少しも抜ける気配がしなかった。


「くそ!やはり駄目だ!」


 シグルドは、剣から両手を放した。

 その光景を司教ミーメは首を傾げながら見ていた。


『これは一体、どういうことであろうか?』

 

 実の所、司教ミーメは、このシグルドという青年に、かなり期待していた。その目論見は、見事に外れてしまった訳である。

 ゼエゼエと乱れた息を整えながら、シグルドは思った。


(やっぱり、人生なんてこんなものだ。うまくいかない事の方が多いのは解っているはずなのに・・・どうして俺は期待してしまうんだろうな・・・)


 この場所に導かれるように来た時は、もしかしたらなどと考えていただけに、シグルドは恥ずかしい気分で一杯になった。


 しかし、更なる試練がシグルドを襲うこととなる。

 大聖堂に連なる通路から、規則正しい足音が聞こえ始めたのだ。

 一人や二人の足音ではない。

 大勢の足音が近づいて来るのだ。

 シグルドは、大聖堂の入り口を見て、その足音の主人達を待ち受けた。

 すると入口が開き、そこから、死霊騎士(スケルトンナイト)達が二列縦隊となり入ってきた。

 列は長く、二百体ほどの死霊騎士(スケルトンナイト)が揃っていた。

 シグルドの前で列は止まり、騎士達は左右に分かれて剣を一斉に抜き、(かか)げ持った。

 その奥から現れたのは、胸部に獅子の顔を(かたど)った黒い魔導装甲(マギアームス)(まと)う、圧倒的な鬼気を放つ死霊騎士(スケルトンナイト)だった。

 その額に付けた、サークレットのような簡素な王冠を見てシグルドは悟った。


(これが剣王ジグムント・・・桁違いの強さじゃないか。)


 だが、三度(みたび)シグルドを違和感が襲う。先程見た幻に、目の前の死霊騎士(スケルトンナイト)の王が重なるのだ。


(いや!有り得ない!それよりも相手は、戦う気満々なんだ。集中しろ!!俺!!)


 シグルドは無理矢理、自分に言い聞かせ、その違和感を振り払うと、剣王と謳われた存在に、全神経を集中させた。

 運命に(もてあそ)ばれた二人の存在は、こうしてお互いの正体に気付くことなく巡り合った。


 

 

 試練その一です。

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