表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
大闘技祭の章 急
119/211

決勝戦開始

 魔神族達の暗躍がヴィーグリーズを脅かしているとも知らず、大闘技祭の決勝を行う朝がやって来た。

 早朝より開放された闘技場(コロッセオ)では、既に観客達が所狭しと集まってきていた。

 昨日と同様に、決勝の前座として出場選手達による競技会が始まっていた。

 バランス感覚を養う綱渡りや、魔力量を競う競技などが種目である。

 今日もブッチギリで、ブリュンヒルデとリンドブルムの一騎打ちの様相を呈していた。

 特に、己の力に目覚めたリンドブルムの成長ぶりは凄まじく、何度もブリュンヒルデを追い詰めていた。


「くそっ!また負けた!」

「まだ、力に振り回されているぞ。闘気はより繊細に操らねばな!」

「くうううう・・・」


 そんなやり取りをゴライアスやカーシャは、呆れて見ていた。


「またやってるよ。姫様も随分とブリュンヒルデに突っかかって行くもんだね」

「だが、姫様が気にするのも無理は無い。カーシャ殿は気付かれたか?あのブリュンヒルデは、母君、ヒルデガルド様にその物腰が似ているのだ」

「ヒルデガルド様が亡くなった時、姫様はまだ赤子だったじゃないか」

「そのあたりも含めて、ガルガンチュア様は、後妻にあのブリュンヒルデを迎える気なのかもしれん」

「ああ・・・なるほどねぇ」


 確かに、ブリュンヒルデが、リンドブルムを導く様子は、まるで姉妹か親子のそれであった。

 結果、競技会の総合第一位はブリュンヒルデであった。

 続くニ位には、リンドブルム、次点はゴライアスであった。

 陽は中天に昇り、遂に決勝の開始時間となった。

 余興として、ブリュンヒルデと、リンドブルムの二人が鎧を纏い、それぞれの光の翼で、客席の上空を飛ぶというパフォーマンスが行われた。

 リンドブルムが纏っているのは、神鎧甲(モノケロス)ではない。

 女性部門の決勝で、ブリュンヒルデに傷を入れられたがゆえに、かつて纏っていた深紅の魔導装甲(マギアームス)に戻していたのだった。

 二人の戦乙女(ワルキューレ)の舞いに魅了された観客達は大いに盛り上がった。

 そして、選手入場を告げるアナウンスが響いた。


『西門より、流浪の黒騎士、ジークフリート殿入場です!!』


 跳ね橋が下ろされ(ゲート)が開き、その中からジークフリートが姿を現すと、観客達は熱狂した。

 既に、このヴィーグリーズの誇る重戦士ゴライアス、魔法剣士フェルナンデスを倒したその武名は響き渡っていた。

 なにより、ヴィーグリーズの民は戦士を敬う、そこに他種族の血が混じっていようが、武装による強化だろうが、はたまた他国の戦士だろうがは関係ないのだ。

 それが、ジークフリートには心地よく、そして同時に不快であった。

 生まれ変わる前の自分であればどうであったろうか、弱者はこの国にとって不必要な存在であるのか、それがかつてヴィーグリーズと戦った訳であったからだ。


『東門より、ミズガルズの英雄にして将軍、ヴェオウルフ殿入場です!!』


 そして、これから闘う相手は、かつて上司と仰いだものである。

 あの策謀渦巻くミズガルズにおいて、数少ない信頼のおける者の一人であったヴェオウルフ。

 その英雄譚に憧れた一人の騎士として、ジークフリートは複雑な感情を有していた。

 しかし、後戻りは出来ない。

 自分の居場所はすでにミズガルズには無いのだ。

 老将の視線を正面から受け止めつつ、ジークフリートは覚悟を決めた。

 この英雄の伝説に、今日この場で終止符を打つことを。

 かつては仲間であり、そして目標でもあった上司、将軍ヴェオウルフに挑むジークフリート。

 その胸に去来するのは、戦いへの喜びではなく、悲しさだった。

 以下次回!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ