勝敗の行方
無駄と分かった幻影陣を解き、フェルナンデスはジークフリートへ賞讃を送った。
「剣我一体の境地、まさか私の他に体得している剣士がいたとは驚きでしたが、ゴライアスとの闘いで、それは見ていますよ。」
フェルナンデスはそう言い、風の精霊力を上げる。
「私の武器、風の指揮剣は振るえば振るうほどにその力を増します。私の最速の剣が、貴方に見切れますか?」
風が坂巻き、フェルナンデスの周囲で竜巻を発生させる。
だが、ジークフリートは些かの怯みも見せなかった。
「精霊の相克は知っていよう。火は風を受ければ受けるほど、より強く燃え盛るぞ!」
「それは精霊の強さによりけりです!私の風は、貴方の火などかき消してしまうでしょう!」
二人の間で、火と風の精霊光が、激しく火花を散らした。
「受けよ!螺旋突き!!」
瞬間、ジークフリートが吹き飛ばされた。
「グッ!!」
何とか堪えてみせるものの、黒獅子の鎧の肩口には、大きく抉られた跡があった。
(避けたつもりだったんだが、なんて速度の突きだ。それに衝撃波の範囲もかなり大きい。)
ここが勝負所と捉えたフェルナンデスが、一気に畳み掛けた。
「千本突き!!」
ジークフリートは、避けるのは困難と見て猛然と受けて立った。
「音速撃!!」
かつて、シュベルトライテとの試練において使われたその秘技は、炎の魔剣の力を得て、炎の連撃へと姿を変えていた。
速さにおいては、フェルナンデスがやや上回る。
致命傷を受けないまでも、勝負はフェルナンデスの優勢は明らかであった。
「これは勝負あったかな?」
そう、隣へ座るブリュンヒルデに問いかけたのは、ガルガンチュア王であった。
その顔には、笑みが浮かんでいる。
しかし、その皮肉に対し、ブリュンヒルデは余裕をもって応えた。
「フェルナンデスの技はなるほど、我が主人よりも速度において勝る。しかし忘れてはおらぬだろう、精霊の相克を!火は風に煽られれば激しく燃え上がるということを!」
ジークフリートの勝利を些かも疑っていないその横顔に嘆息しながら、ガルガンチュアは視線を武舞台に戻した。
「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」
まるで、ブリュンヒルデの言葉に後押しされるように、ジークフリートの技の回転が上がって行く。
「ク・・・ウオオオオオオオ!!!」
フェルナンデスがその回転を妨げようとするが、力においてはジークフリートの方が上である。
徐々に、均衡が崩れ、ジークフリートの劣勢は、優勢に逆転した。
「オアア!!!」
最後のひと押しとばかりに繰り出された一撃は、フェルナンデスを仰け反らせるに充分であった。
「ッ!?」
「業斬剣!!!!」
仰け反った瞬間、ジークフリートの狙い済ませた業斬剣が炸裂する。
「グアッ!!?」
その一撃は、フェルナンデスの意識を容赦なく刈り取った。
前のめりに倒れるフェルナンデス。
勝敗は、明らかであった。
「流石は、ヴィーグリーズの剣士団の長。相性さえ良くなければ、切り札を使う羽目になっていた所だぜ。」
今回、魔神化をすることなく、辛くも勝利したジークフリート。
残す試合は、あと一試合となっていた。
遂にフェルナンデスも下したジークフリート!
残す試合は、ミズガルズの英雄ヴェオウルフのみ!
決勝戦の行方はどうなるのでしょう?(笑)




