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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
大闘技祭の章 急
117/211

勝敗の行方

 無駄と分かった幻影陣(ミラージュサイクル)を解き、フェルナンデスはジークフリートへ賞讃を送った。


剣我一体の境地(ソード・オブ・ソード)、まさか私の他に体得している剣士がいたとは驚きでしたが、ゴライアスとの闘いで、それは見ていますよ。」


 フェルナンデスはそう言い、風の精霊力を上げる。


「私の武器、風の指揮剣(ウィンドタクト)は振るえば振るうほどにその力を増します。私の最速の剣が、貴方に見切れますか?」


 風が坂巻き、フェルナンデスの周囲で竜巻を発生させる。

 だが、ジークフリートは(いささ)かの(ひる)みも見せなかった。


「精霊の相克は知っていよう。火は風を受ければ受けるほど、より強く燃え盛るぞ!」

「それは精霊の強さによりけりです!私の風は、貴方の火などかき消してしまうでしょう!」


 二人の間で、火と風の精霊光が、激しく火花を散らした。


「受けよ!螺旋突き(スパイラルスティング)!!」


 瞬間、ジークフリートが吹き飛ばされた。


「グッ!!」


 何とか堪えてみせるものの、黒獅子の鎧の肩口には、大きく抉られた跡があった。


(避けたつもりだったんだが、なんて速度の突きだ。それに衝撃波の範囲もかなり大きい。)


 ここが勝負所と捉えたフェルナンデスが、一気に畳み掛けた。


千本突き(サウザンドスティング)!!」


 ジークフリートは、避けるのは困難と見て猛然と受けて立った。


音速撃(ソニックラッシュ)!!」


 かつて、シュベルトライテとの試練において使われたその秘技(スペシャルアーツ)は、炎の魔剣(グラム)の力を得て、炎の連撃へと姿を変えていた。

 速さにおいては、フェルナンデスがやや上回る。

 致命傷を受けないまでも、勝負はフェルナンデスの優勢は明らかであった。


「これは勝負あったかな?」


 そう、隣へ座るブリュンヒルデに問いかけたのは、ガルガンチュア王であった。

 その顔には、笑みが浮かんでいる。

 しかし、その皮肉に対し、ブリュンヒルデは余裕をもって応えた。


「フェルナンデスの技はなるほど、我が主人よりも速度において勝る。しかし忘れてはおらぬだろう、精霊の相克を!火は風に煽られれば激しく燃え上がるということを!」


 ジークフリートの勝利を(いささ)かも疑っていないその横顔に嘆息しながら、ガルガンチュアは視線を武舞台(ステージ)に戻した。


「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」


 まるで、ブリュンヒルデの言葉に後押しされるように、ジークフリートの技の回転が上がって行く。


「ク・・・ウオオオオオオオ!!!」


 フェルナンデスがその回転を妨げようとするが、(パワー)においてはジークフリートの方が上である。

 徐々に、均衡が崩れ、ジークフリートの劣勢は、優勢に逆転した。


「オアア!!!」


 最後のひと押しとばかりに繰り出された一撃は、フェルナンデスを仰け反らせるに充分であった。


「ッ!?」

業斬剣(エゴスライサー)!!!!」


 仰け反った瞬間、ジークフリートの狙い済ませた業斬剣(エゴスライサー)が炸裂する。


「グアッ!!?」


 その一撃は、フェルナンデスの意識を容赦なく刈り取った。

 前のめりに倒れるフェルナンデス。

 勝敗は、明らかであった。


「流石は、ヴィーグリーズの剣士団の長。相性さえ良くなければ、切り札を使う羽目になっていた所だぜ。」


 今回、魔神化をすることなく、辛くも勝利したジークフリート。

 残す試合は、あと一試合となっていた。

 遂にフェルナンデスも下したジークフリート!

 残す試合は、ミズガルズの英雄ヴェオウルフのみ!

 決勝戦の行方はどうなるのでしょう?(笑)

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