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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
大闘技祭の章 急
116/211

風と炎の激突

 試合が始まると同時に、フェルナンデスは何気ない仕草で、レイピアを横に振った。

 ピュンという風切り音と、ジークフリートが地を這うように横に飛んだのは、ほぼ同時だった。


「ほう・・・。」


 フェルナンデスが感嘆の呟きを洩らしたが、観客達はなぜジークフリートが突然、あのような回避行動をとったのか分からなかった。

 しかし、それはすぐ理解されることとなる。

 ジークフリートが立っていた場所と、フェルナンデスが立っていた場所、その射線上にある(ピラー)が、ズッという音と共に、斜めにずれ、ゆっくりと倒壊していったのだ。


「あっぶねー・・・。」


 観客達の歓声が響く中、ジークフリートはほぼ無意識に反応することが出来た、自分の第六感ともいえる危機回避能力に感謝した。


気流刃(エアロカッター)、よく躱せましたね。驚きました。」

「随分とえげつない攻撃じゃないか。不可視の真空衝撃波(ソニックブーム)による奇襲とはな。」

「それを予備知識もなく避ける貴方も大概ですがね。参考までに、なぜ避けられたのか教えてくれませんか?」

「なぁに、見えない攻撃の得意な仲間がいるんでね。一緒に鍛錬するうちに、なんとなく避けられるようになっただけさ。」


 ジークフリートは、チラリと観覧席に座るシュベルトライテを見た。

 フェルナンデスは、やや呆れながら言った。


「それは、一種の境地とも言うべき技能ですよ。それをなんとなくとは、世の剣士達が聞けば、泣いてしまいますよ。」


 世間話でもするように、二人は話し合う。

 しかし、その会話の間に、フェルナンデスの次なる技が完成させていた。

 なんと、フェルナンデスが五人に増えたのである。


『この姿でのみ使用可能な、幻影陣(ミラージュサイクル)です。果たして(やぶ)れますでしょうか?』


 言うと同時に、五人のフェルナンデスが殺到してきた。

 それに対し、ジークフリートは単身で挑んでゆく。

 観客達は、ジークフリートが切り刻まれる未来を予想した。

 しかし、その予想は外れることとなる。

 五人のフェルナンデスが繰り出す刺突や、真空衝撃波(ソニックブーム)による連続攻撃を、ジークフリートは全て凌いでみせたのである。


「なに!?」


 その理由に、フェルナンデスは驚愕した。

 なんと、ジークフリートは目を閉じて応戦していたのである。


「馬鹿な!その様な方法で!!」

「なまじ目で見るから惑わされる。ならば初めから見なければいいだけの事!」

「それは、心眼(マインドアイ)ではないか!その歳ですでに開眼しているというのか!」

「ガルガンチュアに挑もうって言うんだ。この程度は出来なきゃお話にならんだろ!!」

「クッ!!」


 フェルナンデスが僅かに怯んだ隙を見逃すようなジークフリートではなかった。


「行くぞ!!炎刃波(フレイムカッター)!!!」


 振り抜いた剣の軌跡から炎の刃が形成され、フェルナンデスに襲いかかる。

 フェルナンデスは、それを気流刃(エアロカッター)で迎撃する。

 ドウン!と空間が破裂するような音が鳴り響き、爆発によって黒煙が湧き上がる。

 しかし、二人は止まらない。

 互いの技を駆使し、相手に一撃入れようとするが、決定打にならないのだ。

 そこで、ジークフリートは更にギアを上げることにした。


「じゃあ、もう一段階上に行かせてもらうぞ!!ヴィー!!」

『了解だ!ご主人(マスター)!!』

「『炎竜化(ドラゴンモード)!!!』」


 ジークフリートの身体が、炎を纏いその背に、炎で造られた翼が顕現する。

 ゴライアスとの闘いでも見せた、炎の魔剣(グラム)の力と一体になる技である。


 フェルナンデス戦も佳境です!

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