競技会
さて、大闘技祭も五日目となった。
現在、武舞台の上では二人の乙女によるデッドヒートが繰り広げられていた。
「ヌオオオオオオオオオ!!」
「ハハハ!やるではないか!リンドブルム!!」
露出も現な二人は、武舞台の外周を疾走していた。
この日行われる試合の前に、余興としてこれまで出場した選手達による競技会が始まっていた。
この武舞台、競技場としての機能も有しているため、このような祭時には力比べや、徒競走などの競技に使えるよう整備されているのだった。
外周は2キロメートルもあり、今行われているのは中距離走、外周を一周するというものだ。
しかし、ブリュンヒルデもリンドブルムも短距離走の速度である。
少し遅れて、カーシャ、エルルーン、ゴライアスなどが続くが、全く相手になっていない。
ちなみに、全員肌着のみの着用である。
競技会では、当然、魔導装甲や、魔法の効果のある装備は一切身に着けてはならない為である。
「今日こそお前に勝つ!」
「そのセリフは何度も聞いたぞ!口だけでなく実行してみせるのだな!」
言い合いをしながら、物凄い速度で、二人は同時にゴールに飛び込んだ。
勝者はブリュンヒルデであった。
紙一重、正に胸の差でブリュンヒルデに軍配が上がったのである。
「胸の差だと!!納得がいかん!!速さは互角だというのに、そんなことで!!」
両手両膝をつき、ガックリと項垂れるリンドブルムに、ブリュンヒルデが追い打ちをかける。
「要は、女としての魅力の差だ!悔しければ女を磨くことだな、リンドブルム!ハーハッハッハッハ!!!」
「お、おのれ~!!」
熾烈な女の闘いが繰り広げられていた。
そのころ、ジークフリートは控室で精神統一を行っていた。
「お!ブリュンヒルデの姉様が勝ったぞ。ご主人は見んのか?」
少女の姿となったヴィーが声をかけるが、ジークフリートはチラと片目を開けただけで、すぐに精神統一に戻った。
「なんじゃ・・・。つまらんのう。」
すでに、この控室も人はジークフリート以外に、ヴェオウルフと対戦する闘士しかいない。
歓声が聞こえてくる競技場からは、またしてもブリュンヒルデとリンドブルムの声が響いてきた。
今度は槍投げであるらしく、ブリュンヒルデが投げた槍が、客席にまで届き少し騒ぎになっていた。
(規格外すぎるな。我が正妻殿は・・・。)
微笑みながらジークフリートは次の試合で闘うフェルナンデスのことを考えていた。
並みの剣士ではない。
少なくとも、以前の自分では勝てなかっただろう相手だろうと思い至った。
(全ては、リンドブルム。そして、その母ヒルデガルドの為だ。自分を殺し、ただひたすら彼女に尽くす。まさに騎士の鏡の様な男だ。俺には出来なかったことだ。それだけでも、敬意をもって闘うに値する男だが・・・。)
ジークフリートは、競技を見ているであろうガルガンチュア王との闘いの為、力を温存しようかどうか迷っているのであった。
「やってみるか!!」
立ち上がったジークフリートに、槍投げの優勝はゴライアスであるというアナウンスが聞こえて来た。
なんでも槍が場外まで飛んでいったらしい。
ジークフリートの頬を汗が伝った。
(あいつもいい加減、規格外だな。)
陽は中天に昇り、いよいよ試合が始まろうとしていた。
次は、いよいよフェルナンデスとの闘いであります。
疾風の剣士、いかなる闘いとなるのでしょう。