剣士の思惑
ジークフリートに宣戦布告を果たしたフェルナンデスは、ゴライアスの元に向かった。
ゴライアスの性格を熟知しているフェルナンデスは、彼が自決でもしないかと心配になったからであった。
しかし、フェルナンデスが医務室に入ってみると、そこにはえらくすっきりした面持ちのゴライアスが、ボロボロになった重戦士用の制服を着替えている所であった。
といっても、上半身の制服は既に形が無く、ズボンの切れ端が僅かに残るだけである。
「ゴライアス!起きていて平気なのか!?」
「フェルナンデスか?見ての通りピンピンしているさ。あのジークフリートという若者、口だけではなかったということだな。」
「だからといって、姫様を他所者に委ねてもよいのか!?まさか貴公!我等の誓いを忘れた訳ではあるまい!!」
ゴライアスは激情を隠しきれないフェルナンデスに、まずは落ち着けと前置きし、自分の気持ちを明かした。
「俺は、全てを出し尽くした上で負けたのだ。とりあえずスッキリしているよ。だが、いくら口で説明しても、これだけは伝わらん。後は、自分自身の目で見極めるしかあるまいよ。」
「言うまでもない!!」
フェルナンデスはそのまま去ろうとしたが、ゴライアスがその背中に、声をかけた。
「少なくとも、姫様が人を見る目は、確かだと言っておこう。それに、頭に血をのぼせたままで勝てるほど甘い相手ではない。」
振り向いたフェルナンデスに、ゴライアスは一言づつ丁寧に言い聞かせた。
「俺の事など放っておけ。お前はお前の闘いをすればいい。その上で、お前が決めろ。」
フェルナンデスの顔に、困惑が浮かんだ。
「決める?何をだ?」
「果たして、姫様を託すに相応しい人物かをな。」
ムッとしたフェルナンデスに、ゴライアスが笑いかけた。
「当然、お前に負ける程度では、話にならんがな。」
その一言で、フェルナンデスは大きく一息ついた。
「忠告、聞き入れておこう。確かに負けなければ良いだけの事であったな。それならば、先程の相手には、悪いことをしたな・・・。」
ばつが悪そうに、フェルナンデスが目を逸らせた。
「あの闘士には、王が医療魔術師の中でも、最高の腕を持つ奴を付けるそうだ。心配はいらんぞ。」
今度は驚きで、ゴライアスを見返したフェルナンデスであった。
「王の信頼に応えるのも、臣下の役目だと、俺は思うがね。」
着替え終えたゴライアスは、軽くフェルナンデスの肩を叩いた。
「暇なら付き合ってくれんか?今から姫様に、敗北の詫びを入れに行かなきゃならんのだ。いつもの話術でなんとかしてくれ。」
いつもとなんら変わらぬ好敵手に、フェルナンデスはやれやれと肩を竦めた。
「私は明日試合です。忙しいんですよ。そちらは自分で何とかして下さい。」
そう言うと、フェルナンデスはさっさと立ち去って行った。
まだ、ゴライアスが何か言っていたが、心にかかっていたモヤは、綺麗に無くなっていた。
(そう、全力で闘うのみ!それがヴィーグリーズの誇りだ!なにも迷うことは無い。)
フェルナンデスは、ジークフリートとの闘いに向け、その闘志を燃え上がらせた。
(我が疾風の舞い。しかと見せてくれよう!!)
第二試合は、フェルナンデスとの闘いです。
ジークフリートちっとも出てこなかったね。
自分でも、ビックリです。(汗)