一難去って
ジークフリートとゴライアスの両者が共に着地し、観客達は決着の行方に息を飲んだ。
ゴライアスはニヤリと笑った。
ハンドアックスに確かな手応えがあったからだ。
ジークフリートの肩口と、左足の魔導装甲に亀裂が入った。
(流石と言ったところだな。躱しきれなかった。最後の一瞬で加速するとはな。)
ジークフリートは、ゴライアスが見せた底力に感心した。
次の瞬間、ゴライアスの意識は途切れた。
ゆっくりと、信じられない面持ちで倒れながら、ゴライアスの獣人化が解けていった。
武舞台に倒れ伏したゴライアスの肉体に、傷は一切ない。
ジークフリートは、不殺の剣である、業斬剣を見事習得したのである。
「「「「ウオオオオオオオオオオ!!!!」」」」
観客達が、勝者を讃える。
ジークフリートがそれに応え、炎の魔剣を翳したが、攻撃の全てを躱しきれなかったことに、納得がいってなかった。
そのとき、魔剣と化したヴィーが、ジークフリートに語りかけた。
『ご主人、気付いていないのかも知れんが、汝は魔神化しておらんのだぞ?』
えっ?と思わず自らの手を見つめるジークフリート。
しかし、確かに魔神化はしていない。
予選で、ゴライアスの闘いを見て、少なくとも、魔神化の必要があると思っていたのだ。
ジークフリートは、我知らず震えた。
(俺は、確実に強くなっている!スキーズブラズニルの上での修行の成果だ!このまま、俺はどこまでも強くなれる!今はそう思う!)
ガルガンチュアの隣で、自分を見ているブリュンヒルデに、感謝と敬意を込め手を振り、ジークフリートは退場した。
最も、リンドブルムは自分に向け手を振ったのだと思い込み、また顔を赤くしていたりした。
さて、次に試合を行ったのは、フェルナンデスであった。
この日の彼は、試合開始の前から、殺気にも似た闘気を放っていた。
「貴方も災難ですね。今の私と当たるなど、不運としか言いようがない!」
試合開始から、二十秒ほどで決着が付いた。
相手の選手は、全身を切り刻まれ、完全に行動不能にさせられたのだ。
傷から流れ出た血で、武舞台は真っ赤に染まった。
その闘士は、命は助かったらしいが、復帰は難しいとのことだ。
そして、その日の最終試合、ヴェオウルフの試合は、終始相手を圧倒した一方的な試合運びとなった。
やはり、ジークフリートの相手となるのは、この二人らしい。
(試練というには、なかなか高い壁だな。だが、前に進むしかない!)
ジークフリートの目には、王の観覧席の後ろに飾られた、女神の封石が映っていた。
ゲルヒルデ、彼女を復活させるには、ガルガンチュアに勝利するしかないのだ。
その決意を新たにしたジークフリートの前に、フェルナンデスが現れた。
「まずは、おめでとうと言わせてもらいましょう。しかし、すぐに後悔することになるでしょうがね・・・。」
そう言うだけ言うと、フェルナンデスは去って行った。
「一難去って、また一難といった所だな。」
こうして、大会四日目は終了した。
夏本番、そして、仕事も本番になってまいりました。
出張の際は、投稿が出来ないので遅れましたが、ボチボチ進めて行きます。
遅れてすみません!