半獣
半獣人
この世界では獣牙族と呼ばれる者達がいる。
肉体の一部に、獣の特性を持つこの種族と婚姻し、子供が出来ると、その子供は、普段は人間の姿であるが、感情の高ぶりや、生命の危機に苛まれると、獣牙族としての能力と姿が発現される。
大人になるにつれ、変身能力は自らの意思で制御できるようになるのである。
しかし、その存在は、獣牙族にとっては、血を穢したと忌み嫌われ、人間種族の間では、この世界における最大宗派である光の聖教会の教えによって、異端として扱われ、奴隷や、非人つまり人に在らざる者として見られるのが普通であった。
だが、ヴィーグリーズにおいては違う。
目の前に立つ、このゴライアスのように、正しい人格と実力があれば、一人前の人間として認められるのだ。
『さて、ここからは、この俺の全てを持ってお相手しよう!!』
ゴライアスは再びハンドアックスを構えた。
巨大になったその体には、小さすぎる得物であるが。
柄の中心にある宝石が輝くと、ゴキゴキン!!と金属音が響き、ハンドアックスがゴライアスに合わせて、巨大化した。
「なに!?」
驚いたジークフリートに、ゴライアスは肩を揺らしながら語った。
『我が国家が、ドゥベルグ(ドワーフ)の国、スヴェルトアールブと友好な関係にあるのは知っているだろう?これは、かの国で最も腕の立つ職人が鍛えた業物よ!!暴帝の牙!!その身で受けるがいい!!』
ゴライアスが地を蹴った。
(速い!!!)
ジークフリートは後退しつつ、その一撃を躱した。
その瞬間!
『ゴアアアアア!!!』
ゴライアスが、咆哮を轟かせた。
ドン!!という空気を叩く音が響いた。
「なにっ!!?」
ジークフリートは衝撃波に吹き飛ばされた。
『咆哮撃、命には届かぬだろうが、牽制には充分!!』
吹き飛ばされ、体勢の不安定なジークフリートへ、ゴライアスの暴帝の牙が迫る。
『終わりだ!!』
振り下ろされた暴帝の牙はしかし、空を斬った。
『なっ!?』
ゴライアスは空中を見上げた。
そこには、炎の翼を背負ったジークフリートがいた。
「やれやれ、まさか初戦で、これを使う羽目になるとはな!」
『こちらも、出し惜しみは無しで行こうぞ!ご主人』
魔剣となったヴィーも、些か場の雰囲気に酔っているようだ。
だが、ジークフリートもその意見には賛成だった。
「じゃあ!行ってみますか!!」
炎の翼を羽ばたかせ、ジークフリートは宙に舞う。
炎の弾丸と化し、ジークフリートはゴライアスを中心に飛ぶ。
「地獄の修行で手に入れた力!試させてもらうぞ!!」
『小癪な!!ならば撃ち落としてくれる!!』
ゴライアスは、咆哮撃を乱射する。
しかし、飛燕と化したジークフリートには掠りもしない。
『オノレエエエエエ!!!』
焦りと共に、吐きだした衝撃波は、虚しく虚空に消えた。
逆に、炎の渦となったジークフリートから、炎弾が放たれる。
ドン!!ドドン!!
次々と炎弾が着弾し、ゴライアスの体力を奪っていく。
だが、ゴライアスも意地である。
半獣人の再生力を活かし、ガードを固めた。
それを見たジークフリートは、一つあることを思いついた。
(ガルガンチュアと闘う前に、壁を一つ越えさせてもらう!!)
ジークフリートは、闘気を集中し始めた。
ゴライアスさん、反撃に出るも、ジークフリートの新たな力によって追い込まれてしまいました。
さて、ジークフリートの越えようとしている壁とは、一体なんでしょうか?