重戦士との闘い
武舞台の上は、雪が積もり機動力が生かす事が出来ない戦場となっていたが、今のジークフリートには、全く障害と成らなかった。
「ヴィー!出番だぞ!!」
『任せよ!ご主人!!』
魔剣と化したヴィーの答えと共に、炎の魔剣から凄まじい熱波が放たれた。
一瞬にして、武舞台の上に在った雪が、蒸発した。
「グオッ!?」
放射状に広がった熱波に当たったゴライアスからは、驚きの声が上がった。
どうやら、予想以上に高温の熱波であったらしい。
ジークフリートには当然、一切影響は無い。
「言っておくぞ、ゴライアス!この炎の魔剣の力、重装甲とて、泥のように切り裂くぞ!!」
そう言いながら、ジークフリートは踏み込んだ。
ゴライアスの反応できるスピードを越えて。
「赤熱刃!!!」
ズバッ!!!
逆袈裟に切り上げた刃が、ゴライアスの重装甲を切り裂いた。
「グッ!?」
「まだまだ行くぞ!!」
ジークフリートの速度がさらに上がる。
「馬鹿な!フェルナンデスよりも、速さは上だというのか!?」
「音速撃!!」
ズババババババン!!
重装甲が剥ぎ取られていく音が続き、最後にジークフリートはゴライアスの懐に飛び込む。
ドゴッ!
「グアッ!!」
ジークフリートの拳がゴライアスの腹にめり込む。
スッと離れるジークフリート、すでに決着は付いたかに思えた。
「ま・・・まだだぜ!!」
ゴライアスはまだ倒れていなかった。
その闘志にも、いささかの衰えもない。
魔導装甲を纏った一撃である。
もはや、行動自体不可能になっているはずだ。
それなのに、未だ勝利を目指し挑んでくるのだ。
(これだから、ヴィーグリーズの戦士ってやつは・・・。)
かつて、リンドブルムがミズガルズへ攻め込んだ時、幾度か戦ったヴィーグリーズの戦士達も、決して引かなかった。
それゆえ、ジークフリートは、リンドブルムを名指しし、一騎討ちに持ち込み、リンドブルムを殺さずに勝利することで、撤退に追い込んでいたのだ。
その、揺ぎ無い忠誠心と闘争心は、ジークフリートをして、何度も感心させられたものだ。
それは、憧れに近いものであった。
「仕方ねぇ!アンタが相手じゃ出し惜しみはいけねぇってことだな!!」
ゴライアスの叫びが、ジークフリートを現実に戻す。
重装甲を破壊された男に何があるのか、そう思ったジークフリートの前で、ゴライアスの肉体が盛り上がる。
それと同時に、体毛が全身を覆っていく。
顔の骨格が、音を立てて形を変え、食いしばった歯が、牙と呼べるものに変化していく。
「おいおい!まさか!!」
『そのまさかよ!!!』
二倍以上に巨大化した肉体は、剛毛に包まれ、犬科のそれに似た顔は、まさに狼のものである。
『誇りに思え!この姿で闘うのは、貴様で三人目だ!!一人目は、我が王ガルガンチュア様!二人目はリンドブルム様の御母君ヒルデガルド様!!三人目は我が好敵手フェルナンデス!!!』
ゆっくりと体を起こしジークフリートを見下ろすその目に、油断は一切ない。
『この姿になったからには、必勝あるのみよ!!』
再び、闘いの火蓋は、切って落とされた。
ゴライアスさん変身!!狼男の血をひく、正に獣戦士でした!!