男性部門本選開始
男性部門本選の朝は、凍えるような寒さであった。
それというのも、今降ってきている雪のせいである。
しかし、闘技場に集まって来た者達には、全く問題となってなかった。
その熱気で、この冬の寒さも吹き飛んでしまいそうである。
実際は、魔導士達の結界が、雪や寒さから守っているのであるが、ジークフリート達、出場選手達には、結界の効力は適応されていない。
自然のままの環境で実力を発揮できない者は、真の闘士に在らず、ということらしい。
ドン、ドン、と太鼓が鳴らされ、本選の開始が近い事を知らせていた。
だが、ジークフリートの頭の中は、昨日の晩餐会に、ガルガンチュアの言った一言が支配していた。
確かに、ガルガンチュアの方に何の利益もなく、こちら側の要求のみを通すなどという都合のよい話などある訳がない。
しかし、誇り高いガルガンチュアならば、もしやという思いがあったから、ジークフリートはブリュンヒルデの尻馬に乗ったのだ。
ところが、話は予想の斜め上を行った。
ガルガンチュアは、自分が勝った場合、ブリュンヒルデを嫁に寄越せと言ってきたのだ。
ジークフリートが、返答に困っていた時、またしてもブリュンヒルデが先んじて答えた。
『その話、承った!!』
ガルガンチュアは、大笑し、後の晩餐会はつつがなく執り行われた。
事の成り行きを見守っていた賓客達は、この話題に興味津々の様子で、今日の本選を楽しみに見に来ているようだ。
(とんだ事になったものだ。まさか、ヒルデを嫁に欲しいとか言い出すとは。ヒルデの奴も、あっさり受けたのは俺を信じてのことだと言っていたが、とにかく、後戻りは出来ない。まずは目の前の闘いに集中しなくては!!)
跳ね橋が下ろされ、入場が始まった。
アナウンスと観客達の歓声が聞こえる中、ジークフリートは武舞台の中心に進んだ。
そして、対面の跳ね橋が下り、その中から、重装甲を装着したゴライアスが現れた。
まるで、巨大な壁の様なその姿は、見る者に圧倒的な重圧を与える。
機械的な補助能力を持つこの重装甲は、着用した者の力を大幅に向上させるが、その重量ゆえに、動きを制限されるのだ。
だが、ジークフリートはゴライアスの予選での闘いを見て、その恐るべきは、カウンター能力にあると知っていた。
得物は、両の手に持ったハンドアックスである。
まさに、動かざること山の如し、その一語に尽きる戦い方である。
「この時を待っていたぜ!!姫に近づく虫は、俺が一匹残らず退治てくれるわ!!」
すでに、戦闘態勢に在るゴライアスを前に、ジークフリートは笑った。
「いいねぇ!その闘気!!久しぶりに好敵手と巡り合えたようだ!!」
二人の闘気がぶつかり、大気を揺らした。
ガルガンチュアは立ち上がり、本選の開始を宣言した。
「それではこれより!!男性部門本選第一試合、重戦士団団長ゴライアスと、黒騎士ジークフリートの試合を開始する!!」
二人が同時に構えを取った。
「姫を守る第一の盾!!ヴィーグリーズ上戦士団団長ゴライアス!!行くぞ!!」
「ヴァルムンクが騎士!ジークフリート!!参る!!」
ガルガンチュアの手が振り下ろされた。
「それでは!!始めぃ!!!」
重戦士ゴライアスとの闘いが始まりました。
ジークフリートの第四の試練が、本格的に始まりました。
無事に、ガルガンチュアにまで届くことができるでしょうか?
以下次回!!




