誓約
流石に国家の威信もかかっている晩餐会である。
ジークフリートが見たこともないような豪勢な料理が、次々と運び込まれて来た。
この世界のマナーというのは、中々に大雑把である。
食事をしながらの歓談なども許されている。
各国の貴族たちがそれぞれ友好を交わすため、声をかけ合うなか、ガルガンチュアは、ジークフリートに話しかけて来た。
「ときにジークフリート殿、貴殿がこの国に来たのは、リンドブルムを嫁に迎えるためらしいな?」
ガルガンチュアの隣で、蜂蜜酒を飲んでいたリンドブルムが、ゲホゲホと咳き込んだ。
「ち、父上・・・その儀は。」
「この国の未来に関わることだぞ。おろそかには出来ん。」
などと、語り合う親子を前に、ジークフリートの頭の中は、完全に停止していた。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・え?)
しかし、横からその問いに答えた者がいた。
もちろんブリュンヒルデである。
「その通りだ!その為にガルガンチュア王、我が主殿は貴方に挑み、国宝である女神の封石を手に入れるためにここに来たのだ!」
その言葉に、晩餐会の席は大騒ぎとなった。
誰もが、国交そっちのけで、この話題に聞き耳を立て始めた。
ジークフリートは、ブリュンヒルデの方へ顔を向け、目線で問うた。
しかし、ブリュンヒルデは、分かっているとでも言いたげに頷くと、言葉を続けた。
「主殿は必ず優勝し、貴方に挑戦するだろう!結果、主殿が貴方に勝った場合、二人を婚約者と認めなさるか?いかに!ガルガンチュア王よ!」
ジークフリートが振り返ると、そこには修羅がいた。
闘気を放ち、こちらを見据えている。
「覚悟はあるのだろうな?ジークフリート殿?」
こうなってしまっては、ジークフリートも腹を括るしかなかった。
「受けて頂けますか?」
闘気を真っ向から受け止め、問いかけた。
そもそも、ガルガンチュアと闘うため、この大闘技祭に参加したのだ。
主旨は変わってしまった気がするが、結果は同じだ。
ガルガンチュアは、笑い声を上げた。
「ガァッハッハッハッハッハ!!いい度胸だ、ジークフリート!気に入ったぜ!だがな、俺に挑むには、少なくとも後三回勝たねばならん!なあ!ゴライアス!」
「応!!!」
ガルガンチュアの呼びかけに、屈強な大男が立ち上がった。
ヴィーグリーズにおいて、重戦士団を率いる最強の戦士、そして。
「フェルナンデス!!」
「ハ!!」
優雅に立ち上がったのは、剣士隊隊長であり、そして最速を誇る剣士であった。
「それだけじゃねえ!今年はもう一人いるぜ!知ってるだろうと思うが、ミズガルズの英雄、ヴェオウルフ殿だ!」
皆の注目が、一人の老人に集まる。
老人は、目を閉じ、腕を組んだまま着席していたが、溢れる闘気は、隠し切れていなかった。
「その全員に勝ち!その上で俺に挑むんだな?ヴァルムンクの王子!ジークフリートよ!!」
その言葉に、会場が揺れた。
動揺や、戸惑い、そして驚愕が会場に満ちた。
ヴェオウルフも、目を見開いていた。
「いかにも!」
ジークフリートは、少しも揺るがず応えた。
ガルガンチュアは立ち上がり、ジークフリートを見据えながら答えた。
しかし、その答えは予想の少し上を行くこととなる。
「いいだろう!受けて立つ!!ただし!俺が勝ったら、お前の女、ブリュンヒルデを妻として貰い受ける!!」
流石に、それは予想していなかった。
ガルガンチュアさん暴走!!リンドブルムさんも目が点になっていたことでしょう!
さて、次回からは、男性部門本選となります。
強敵ゴライアスにジークフリートはどう挑むのか?




