雷帝の招き
『決まりました!!今年度女性部門優勝者は白銀の戦姫ブリュンヒルデ殿です!!』
場内アナウンスが響き渡ると、客席からは紙吹雪が舞った。
よく見ると、それはリンドブルムにかけた者たちの掛札であった。
これもまた、ヴィーグリーズでよく見られる光景であった。
その紙吹雪の中、ブリュンヒルデはガルガンチュアの観覧席まで招かれた。
国王自ら、闘技祭の優勝者に、賞金と盾が送られるのだ。
その堂々とした姿と、美しさに、貴賓席にいた賓客達も、息を飲んだ。
それは、初めてブリュンヒルデを間近に見たガルガンチュアも同じであった。
(何という美しさか!このような女性は我が妻、ヒルデガルド以来見たことがない!)
しかも、その強さもまた、自分の娘、リンドブルムの上を行き、医療班の話によれば、リンドブルムの負傷は、打撲だけで、斬られたはずの箇所には、傷一つなかったそうだ。
賞金を控えていた侍従に預け、盾を持って観客達に応える姿は、女性でなければ王者のそれである。
その姿に、ガルガンチュアはつい声をかけてしまった。
「ブリュンヒルデ殿。よろしければ、今宵は共に晩餐などどうかな?」
この提案に、宮廷魔術師の筆頭であるブラギは、片眉をあげ自らの王を仰ぎ見た。
妻であるヒルデガルドが死んでからというもの、女性には見向きもせず、遠避けていたにも関わらず、晩餐に招いたからである。
むしろ、ブラギにとっては願ってもない事であった。
なにせ、王位の継承権を持つのは、第一王女であるリンドブルムのみであったからだ。
「連れと一緒であれば構わぬぞ。それでよいなら受けよう。」
一国の主に対して、物怖じしないその態度に、ガルガンチュアは大きな笑い声を上げた。
「ハハハ!構わん構わん、何人でも連れて来るがよい!」
「では、その言葉に甘えよう。私の他に七人ばかりだな!」
「分かった!用意させよう。城まで来れば、私の元まで通すように、取り計らっておく。楽しみにしているぞ!」
そう言うと、ガルガンチュアは、闘技場に集まった観衆に向け、闘技祭三日目の終了を宣言した。
「今日ここに、新たなる勝者を迎えた!そして、明日からはいよいよ男性部門の本選開始である!ヴィーグリーズの民達よ!活目して見るがよい!!」
「「「「勇者に栄光あれ!!!!」」」」
観客達が唱和し、退席を始めた。
ブリュンヒルデは、ガルガンチュアの招きに応じるため、ジークフリートの元へと急いだ。
(さて!面白くなってきたぞ!二人の勇者の邂逅と行こうか!!)
などと、不謹慎なことを考えながら、ブリュンヒルデは足取りも軽く闘士達の控室に返って行った。
先程までの激戦を感じさせないその姿に、ヴィーグリーズの民達は、改めてブリュンヒルデの規格外の強さを認めたことだった。
おや?意外な展開になってきました!(笑)




